研究課題/領域番号 |
19K20012
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研究機関 | 東京成徳大学 |
研究代表者 |
夏原 隆之 東京成徳大学, 応用心理学部, 准教授 (40733019)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | サッカー選手 / 知覚運動スキル / 眼球運動 / パス / 状況判断 / 制約 / トレーニング |
研究実績の概要 |
本年度(令和元年度)の研究目標は,知覚運動スキルにおける熟練差について検証することであった(課題1).主な実績は以下の通りである. 熟練度の異なる実験参加者に対して,4 vs. 4の攻撃場面を視聴させ,ボール射出マシンから射出されたボールを1タッチでパスする状況判断テストを行った.課題遂行中の眼球運動(入力)および身体運動(出力)を同時に計測するために,ポータブル型の眼球運動計測装置および運動反応を捉えるビデオカメラを同期させ,情報の入力から出力までの振る舞いを検証した.特に,選手が,いつ,どこを見ているのかについて検討をするために,味方がボールを持っている局面と,味方からパスされたボールを受け取る局面という2つの時間に関する要因を統合し,時間,視線を向ける場所,熟練度の3つの要因の影響を考慮して分析を行った. 研究の結果から,味方がボールを持っている間に味方や相手,スペースに視線を向け,正確にパスを遂行するために,味方からパスされたボールを受け取るまでの間にボールとパスを出すチームメートに視線を向けることが,サッカーにおける視覚情報収集方略の代表的なパターンの一つだと考えられる.その上で,味方やスペースだけではなく,相手の位置や守備の状態に注意を向けることは,相手の守備システムの潜在的な綻びを直感的に検知したり,利用可能なスペースを素早く探知し,相手の動きと位置関係に基づいた的確な状況判断を可能にするための重要な視覚情報収集方略になると考えられる. これまでの研究から,適切な意思決定を促す際には,迅速に判断し直感的な反応を要求するほうが高いパフォーマンスを導く可能性が示唆されていることから,今後は,状況判断を養うトレーニング方法の一つとして,1タッチでのパスやタイムプレッシャーを設定する等の制約が,状況判断やプレーにいかなる影響を及ぼすかについて検討することを予定している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究課題1を踏まえて,ピッチサイズやプレー関与人数,タッチ制限といった制約が状況判断やプレー行動に及ぼす影響について検討するはずであったが,コロナウイルス感染拡大の影響で,予定していた実験が中止・延期となっており,実験再開のめどが立っていない.
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今後の研究の推進方策 |
研究課題1の成果を踏まえて,ピッチサイズ,プレー関与人数,ゴール設定,タッチ制限といったいくつかの制約条件を設け,各制約条件時のプレー行動についての実験を行い,課題の制約が知覚運動スキルに及ぼす影響についてのデータの収集に努める.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)必要な物品等を共同研究者より借用できたことにより,次年度に使用する研究費が生じた.
(使用計画)次年度は,課題の制約が知覚運動スキルに及ぼす影響を検証していく上で必要な物品調達や,実験や情報収集のための旅費,学会等での成果発表のための経費に使用していく予定である.
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