研究課題/領域番号 |
19K20013
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研究機関 | 共立女子大学 |
研究代表者 |
片上 絵梨子 共立女子大学, 文芸学部, 専任講師 (00808850)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 自己成長力 / ソーシャルサポート |
研究実績の概要 |
アスリートが競技生活を送る上で,経験する様々な困難や問題など危機的な場面において,自らそうした場面に対処していくためには,自己成長力(自分自身を伸ばしていこうとする力)は不可欠である.アスリートが自己成長力を獲得する過程において,競技場面内・外の周囲の他者からの支援的関わりが影響していると思われるものの,自己成長力の獲得プロセスおよびその養成につながる他者からの具体的な支援的関わり(ソーシャルサポート)については十分に明らかにされていない.そこで本研究では,アスリートの発達段階(ジュニア期・青年期),およびキャリア軸(競技者としてのキャリア・人としてキャリア)の観点から,自己成長力を獲得するプロセスとその特徴を明らかにし,その獲得プロセスに影響を及ぼすソーシャルサポートを明らかにすることを目的としている. 近年,競技活動を行う上でアスリート自身が主体的に考え,行動する力を身につけることの必要性が広く認識されている.特に,アスリートにとって大きな影響力を持つ存在であるコーチに着目し,コーチングを通してアスリートの心理的側面の成長を高める取り組みが進められている(久木留他,2021).一方で,アスリートはコーチとの関わり以外にも,チームメイトやチームスタッフなどの競技関係者あるいは,友人や家族となど競技以外の重要な他者など,幅広い対人ネットワークを有しており,そうした他者との関わりの中で,心理的側面の成長につながる交流や経験をすることも考えられる.よって,今後の研究において,指導者に限定せず,アスリートに関わる幅広い対人ネットワークに着目し,他者がアスリートの心理的成長に及ぼす影響を検討することは,今後のアスリートを中心とした包括的な支援を考えるために有用な知見獲得につながると考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は以下3点を中心に進めてきた. 1)アスリートの自己成長力獲得に関わる他者のサポート行動抽出:新型コロナウイルス感染症拡大による各競技団体の活動形態の変更や外部者との接触制限により,調査協力の同意が得られていた対象者へのインタビュー実施が困難な状況になった.よって,当初の計画よりアスリートへのインタビュー実施が遅れている状況にあるが,オンライン形式に切り替えて実施した一部対象者から得たデータを基に分析を進めている.また,アスリートへの接触が難しい状況にあったため,オンライン等によって接触可能であった大学運動部の監督など,本研究課題内容に関連するアスリート以外の競技関係者を対象に聞き取り調査を実施した.今後の新型コロナウイルス感染症拡大状況次第ではあるが,現在,計画を進めるため調査協力者と日程の調整を進めている. 2)自己成長力に関連する概念に関する文献調査:新型コロナウイルス感染症拡大により,外出や外部との接触を伴う研究活動が制限されたことから,実施可能な範囲での研究活動への切り替えを余儀なくされた.具体的には,前年度に実施した文献調査の内容を基に,さらに対象やキーワードの範囲を拡大して本研究課題に関連する知見の収集にあたった. 3)自己成長力の測定ツールを用いた調査:2019年度に収集したデータを基に,尺度作成に向けた分析を進めている段階にある.項目収集と整理が終了しており,2021年度の量的調査実施に向けて準備を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の研究成果をふまえ,次年度の研究課題である以下2点を中心に取り組む.なお,新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて,2)については研究計画に一部修正を加える予定である. 1)「アスリートの自己成長力尺度」を用いた量的調査:大学生アスリートを対象者として量的調査を行う予定である.尺度の信頼性・妥当性を検証した上で,得られたデータからアスリートの自己成長力の特徴を分析する. 2)自己成長力を有するアスリートへのインタビュー調査:青年期アスリートを対象としたインタビュー実施に向けて,スケジュール調整を進めている.現時点では,合計15名ほどの青年期アスリートから自己成長力獲得に繋がった経験や他者との関わりについてデータを収集する予定である. 現在,感染症拡大の影響を受けて,多くの高校運動部は活動時間の制限や活動形態の変更を余儀なくされている状況にあり,当初予定していた対象者(特に高校生アスリート)を対象に調査を実施することが難しい現状にある.よって,ジュニア期アスリートへの調査については,インタビュー人数を減少させて規模を縮小するなど,当初の研究計画に修正を加え,可能な範囲で調査依頼,実施を進めていく.また,感染症予防の観点から,外部者との対面での接触制限を設けている学校もあるため,オンラインツール(google meetやzoomなど)を用いた同時双方向型インタビューへと切り替え,可能な範囲で調査を実施する.現在,インタビュー実施に向けて調査協力予定の高校と調整中である. 上記変更点に伴う対策として,青年期アスリートへのインタビュー調査内容に,「ジュニア期の他者との関わり(回顧)」に関する項目を追加し,ジュニア期アスリートから収集予定であった内容の補填を試みる予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響による外出や外部接触を伴う研究活動の制限によって,インタビュー調査や対面での聞き取り調査,学術会議での発表が中止となったため. 次年度,オンライン形式によるインタビュー調査を実施する予定であり,インタビュー協力者への謝金として使用する予定である.
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