研究課題
初年度は、幼児から広範囲年齢層の歩行中の足底圧計測を実施し、歩行速度および歩行時空間パラメーターの無次元量データの正確性と妥当性の検討を行った。この理由としては、足底圧分布データが、歩行速度、歩行時空間パラメーター、体のサイズに影響されることが予想されるため最初の検討課題であった。4歳(幼児)から15歳(中学生)の男女合計944名に対して足底圧分布の計測を実施した。被験者は、足底圧計上を通常の歩行動作を行い、同時に側方よりハイスピードカメラ(200fps)で動作を撮影した。撮影された歩行動作の映像から, 歩行速度、スッテプ長およびステップ頻度を算出した。歩行中の時空間パラメーターを以下の式を用いて無次元化した。L(補正歩行ステップ長)=ステップ長/身長、F(補正歩行ステップ頻度)=ステップ頻度/√重力加速度/身長、V(補正歩行速度)=歩行速度/√重力加速度・身長。その結果、4歳から15歳の補正された歩行中の時空間パラメーターは、それぞれ、歩行速度(v)が0.31-0.36, ステップ長(L)が0.41-0.44、そしてステップ頻度(F)が、0.78-0.82の範囲でみられ、補正された歩行中の時空間パラメーターには、年齢間に統計上有意な差はみられなかった。この結果は、ヒトは発育に伴い身体のサイズを考慮しながら歩容を獲得していることと、4歳で既に15歳と同様の歩容を身につけていると解釈できる。初年度の研究成果として、幼児から中学生の歩行を身長によって無次元化された歩行の時空間変数は、同様な値を示していたことから、4 歳時点ですでに 15 歳と同様の歩容を獲得していることが示唆された。したがって、発育に伴う身長の変化が、子どもの歩容を変動させている主な要因の一つであることが考えられた。
3: やや遅れている
初年度の研究の進捗については、計測の実施が年明けに遅れたため、全体的に進行がやや遅れている。計測の日程の調整がつかない期間は、計測方法の確認やデータ分析の方法論について検討を重ねた。結果的に計測データ数に関しては、1000名近い幼児から中学生の被験者データを取得することができたが、高校生から成人、高齢者のデータが不足しているため、今後の課題となる。しかし、第一次成長期後の中学生までの歩行無次元量を検討することができたため、今回の被験者の歩行時空間パラメーター無次元量は、今後のデータ収集予定の高校生や成人データとの差はみられないと予想している。一方で、高齢者の歩行時空間パラメーターの無次元量と比較することは興味深く、歩行に大きく影響する発育や身長以外の要素がヒトの歩容パターンにどれくらい影響しているのかを推定することに繋がる。データ分析に関しては、分析を自動的に行うツールの開発が遅れているため、全体的に研究成果に繋げることが遅れている。また、研究費の使用に関して、カメラの購入等を予定していたが、全体的に計測の時期が年明けに遅れたことや、共同で計測を実施した研究チームに借用ができたために今年度は購入を見送った。しかし、次年度に関しては、引き続き高校生以上の被験者の計測を実施して行かなければならないので、研究機材の購入を予定し、特にマーカーレスの動画を自動トラッキングできる動作分析ソフトウェア導入の必要性が課題として挙げられている。全体的に申請時の研究計画どおりに歩行速度および時空間パラメータの無次元量の検討は進められているので、次年度は、計測環境、特にデータ処理、分析などの研究環境を改善して、本研究の成果を発表して行く予定である。
本年度に関しては、昨年の課題でもある計測環境、特に動画データ処理、分析などの研究環境の改善が第一となる。また、研究計画書の予定通り、足底圧分布データの無次元量の検討に取り掛かる。圧力の無次元量を式で表すとP(無次元量)=P(圧力)/ D(密度)・V^2(速度)で表される。したがって、密度値(D)を検討する必要性がある.この値は,身体組成計測に用いられる皮下脂肪法よる人体の密度値の推定や,または,足底面の面積と身長および体重値を用いて幾何学データから密度値を推定する方法など,足底圧分布データを無次元量として扱う数値の正確性や妥当性を検討する.更に,足底圧分布データの正規化を試みることにより、足底圧分布データの形態的影響を取り除くことができる。これにより、子どもから高齢者の足のサイズに影響されず評価することが可能になる。これらの方法を遂行するためには、足底圧分布データの正規化を行うためのプログラムを構築する必要性があり、今年度、最も研究のタスクにおいてウエイトを締める作業となる。この作業は、各被験者の足のサイズが異なる足底圧分布データのデータ数を統一し、さらに足底の極座標系を一致させる必要性がある。これまでの先行研究においては、この方法を成人データと検討した報告はみられるが、極端に足のサイズの小さい幼児においては、先行研究の方法がどのくらい適応できるかは疑問であり、本研究を進めるための大きな2つの目の技術課題である。被験者データ数は確保できているため、計測ができない環境の際は、足底圧データ解析方法に研究のタスクを置き、現在の状況に対応する。この足底圧分布データの正規化が確立することで、幼児から高齢者までの標準的な足底圧分布パターンを作成し、歩容の違いからタイプ別を試みる予定である。
研究費の使用に関しては主にハイスピードカメラの購入等を予定していたが、教育機関での計測のため、学校予定の調整が必要になり、全体的に計測の時期が年明けに遅れてしまった。計測の調整がつかない期間は、足底圧分布データの計測方法や、歩行中の時空間パラメーターの無次元量の分析方法の確認に現状の研究環境で対応ができたため、研究費の出費が抑えらた。また、教育機関の1日の限られた時間での計測には、保存機能に優れたハイスペックのハイスピードカメラが必要になり、カメラ機能の選定に時間が取られてしまった。しかしながら初年度は、共同で計測を実施した研究チームにハイスピードカメラの借用が出来たために結果として初年度のカメラなどの研究機器の購入を見送った。今年度に関しては、引き続き高校生以上の被験者の計測を実施していかなければならないため、カメラ等の研究機器の購入を予定している。また、初年度の課題として、1000名近い動画データの処理と動作分析に時間がかかる為に、特にマーカーレスの被験者を自動でトラッキングができる動作分析ソフトウェアをとカメラと同時に購入しなければならない課題が挙げられた。動作分析処理の自動化、簡易化は本研究成果を迅速に発信して行く上で重要なため、今年度は研究費を出費していく予定である。
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