2021年度までの研究成果で、高強度静的ストレッチングはセルフストレッチングとして実施でき、短時間で安全かつ効果的にハムストリングスのスティフネスを低下できることが明らかとなっている。さらに、高強度静的ストレッチングは通常強度と比較して効果持続時間も長いことがわかっている。しかし、高強度静的ストレッチングがスティフネス低下に有用なメカニズムは明らかとなっていない。よって、2022年度は高強度静的ストレッチンのメカニズムを明らかにするために、静的ストレッチングの伸長ストレスを定量化(ストレッチング負荷)し、ハムストリングスのスティフネスとの関連性を検討した。 健常成人を対象に、異なる強度(80%、100%、120%強度)の静的ストレッチングを実施した。ストレッチの刺激を定量化するために、等速性筋力測定計を用いてストレッチング負荷を算出した。ストレッチング前後で、関節可動域、受動的トルク、スティフネスを測定した。その結果、関節可動域の変化率はストレッチング負荷と有意な正の相関が認められた。一方、スティフネス変化率とストレッチング負荷に関しては、120%強度では有意な相関は認められなかったが、80%と100%強度においては有意な負の相関が認められた。 以上の結果から、通常強度以下(100%強度)のストレッチングにおいてはストレッチング負荷が重要であるが、高強度の静的ストレッチングにおいては別のメカニズムが存在する可能性が明らかとなった。
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