研究課題/領域番号 |
19K20031
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研究機関 | 長岡工業高等専門学校 |
研究代表者 |
河本 絵美 長岡工業高等専門学校, 物質工学科, 准教授 (40634514)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | immobilization / skeletal muscle / GLUT1 / TXNIP |
研究実績の概要 |
本研究は、基礎状態(食間)のグルコース取り込みを担うGLUT1に着目し、身体不活動がGLUT1依存的な血糖取り込みを低下させる可能性について検討を行った。 実験動物の後肢片側をギプスで固定して筋を不動化した。不動化から6時間後に摘出した筋は多段階遠心分離法を用いて分離し、最終的に、超遠心分離機で粗膜画分を抽出した。イムノブロッティングを用いて、形質膜や小胞体膜などの全ての生体膜成分を含む粗膜画分のGLUT1タンパク質発現量を測定したが、その発現量に変化はみられなかった。一方、不動化した筋で増加を確認しているチオレドキシン結合タンパク質(TXNIP)については、粗膜画分および細胞質画分の両者から発現が確認され、不動化した筋において発現量が増加した。これらのことから、ギプス固定による不動化から6時間後、筋ではGLUT1量の低下以外の要因によってグルコース取り込みが低下していると示唆された。そして、TXNIPが細胞膜近傍に存在し、GLUT1と相互作用することでグルコース取り込みを低下させる可能性があると推察された。そこで、TXNIPがGLUT1と結合している可能性を調べるために、粗膜画分を免疫沈降した。その結果、TXNIPがGLUT1と結合している可能性は得られたが、その割合や生理的意義については検討する必要があると考えられた。今後は、筋のもうひとつの主要なトランスポーターであるGLUT4についても検討を行う。 また、不活動筋における細胞内代謝産物の網羅的解析にも着手したので、今後、評価を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度はGLUT1の膜分画法について検討を重ね、密度勾配遠心法を用いて粗膜画分を細胞膜画分と細胞内プールに存在する低比重小胞体画分に分けることを試みたが、クリアな分画を得ることができなかった。本年においては、初年度の検討をもとに、粗膜画分を分離し、ギプス固定開始から6時間後の不活動筋においてGLUT1量に変化が見られないことを確認し、さらにTXNIPがGLUT1と相互作用する可能性を指摘し、GLUT1発現量とグルコース取り込み低下との関連性について推察することができた。また、本年は、不活動筋においてTXNIP発現が増加する機序として、細胞内代謝産物をメタボローム解析を用いて網羅的に調べることができた。この結果については、次年度に評価する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
GLUT1とTXNIPとの相互作用の可能性について検討を重ねる。また、これまでは、GLUT1に焦点をあてて検討してきたが、骨格筋には筋収縮由来に細胞膜へ移動して血糖を取り込むGLUT4も存在することから、GLUT4発現量についても同様に調べていく。さらに、メタボローム解析の結果も評価していく予定である。
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