研究課題/領域番号 |
19K20035
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
吉田 拓矢 筑波大学, 体育系, 特任助教 (50821716)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | プライオメトリックトレーニング / ドロップジャンプ / リバウンドジャンプ指数 / プレセット / 短間隔皮質内抑制 / 経頭蓋磁気刺激法 |
研究実績の概要 |
本研究では,運動を開始する前のプレセット局面中の脳内状態に着目して,様々な種類のジャンプ運動中における脳内状態や動作特性とパフォーマンスとの関係性について明らかにすることで,脳内状態を活用したプライオメトリックトレーニング法を提案することを目的とした.研究課題1に関して,陸上競技短距離および跳躍選手6名を対象に,0.3,0.6,0.9mの台高からドロップジャンプテストを実施した.その際,経頭蓋磁気刺激装置を用いてプレセット局面中に皮質内抑制回路の興奮性を評価する指標(短間隔皮質内抑制,以下SICI)を算出し,赤外線カメラとフォースプレートを用いてパフォーマンス変数(DJ-index,跳躍高,接地時間)や関節力学量(トルク,パワー,仕事,貢献度)を算出した.また,DJ-indexおよびSICIにおいて,各台高で得られた値の傾きを切片で除した値(a/b)を算出することで,パフォーマンスや脳内状態の選手別の傾向を検討した.その結果,台高の上昇に伴いDJ-indexが増大する選手や低下する選手が存在した.またプレセット局面中の脳内状態は,各台高においても安静状態と比較してSICIの低下を示したが,個別にみると,台高の上昇に伴い脱抑制状態が促進する選手と促進しない選手が存在した.そこで,DJ-indexおよびSICIのa/bを見ると,DJ-indexのa/bがマイナスになっている選手(台高の上昇に伴いDJ-indexが低下)は,SICIのa/bも横ばいもしくはマイナスになる傾向を示した.一方,DJ-indexのa/bがプラスになっている選手(台高の上昇に伴いDJ-indexが増大)は,SICIのa/bが増大している傾向を示した.これらの結果から,台高の上昇に伴いプレセット局面中に脱抑制状態であったが,パフォーマンスが上昇し続ける選手や低下していた選手が存在することが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究課題1の実験が終了している段階である.本課題に対するこれまでの研究や関連研究の成果は,第31回日本トレーニング科学会と24th annual Congress of the European College of Sport Scienceで発表済みであり,現在,論文を投稿準備中である. これまでの研究成果から,台高の上昇に伴うパフォーマンス変数と脳内状態の傾向を示すことができ,これらの知見は,選手に応じたプライオメトリックトレーニングを実施する上で重要な知見が提供できるものと考えられる.一方で,ドロップジャンプやリバウンドジャンプのパフォーマンス変数は,下肢の筋群が相互に関連しあって生み出される成果である.そのため,研究課題1において,これまで明らかにした結果と合わせて、関節力学量を用いた傾向を示す必要がある.現在は,これらの分析を進めている段階であり,終了次第,論文投稿に向けて準備する. 研究課題2については,今春に実験実施予定であったが,新型コロナウイルスの関係で実施できていない現状にある.実験環境の整備および実験対象者のリクルートは終えているため,実験の再開の目途が立ち次第,再開する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
研究課題2に対して,当初はドロップジャンプテストで用いる台高を0.6 mとしていたが,研究課題1の結果から,1つの台高の選択よりも,複数の台高を用いることにより,対象者のパフォーマンスや脳内状態が評価できることが示唆されたため,用いる台高の選択を増やす計画を検討している(0.3および0.6 mの2つを使用予定). また,新型コロナウイルスの影響に伴い,所属する施設での実験が近日中に再開できない可能性もあるため,予備実験を屋外で行うことも検討している.実験対象者のリクルートは追えており、屋外での測定機器についても,当初からマットスイッチを購入する予定であったため,研究環境の面では支障は生じない. これらの変更点を踏まえて,研究課題2の成果を示すことで,異なる技術でのドロップジャンプにおけるプレセット局面中の脳内状態とパフォーマンスとの関係性について明らかにすることができる. また,本年度が最終年度であるため,研究課題1と2の結果を踏まえて,脳内状態を活用した新しいプライオメトリックトレーニング法を提案するための知見をまとめる.
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費が予定していたよりも費用が発生してしまった一方で,旅費,謝金,その他の費用については予定していたよりも費用が発生しなかった.発生した使用額については,物品費で使用予定である. 本年度の予算について,物品費や人件費、その他の費用については予定通り使用する.物品費は,屋外での測定機器(マットスイッチ)や,筋電図や反射マーカーなどの消耗品の購入を予定している.その他については,英文校正費や学会登録費および参加費に充てる予定である.旅費については,既に参加予定であった学会のキャンセルが発生している現状にあるため,使用方法について変更する可能性もある.
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