研究課題/領域番号 |
19K20036
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
越智 元太 筑波大学, 体育系, 研究員 (90833848)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 運動 / 疲労 / 認知機能 / アンモニア代謝 |
研究実績の概要 |
本研究は、運動による実行機能の低下(運動性認知疲労)の生理機構を解明し、その対処法としてのトレーニング法の開発、提案を目指す。3年計画の1年目である令和1年目は、以下の実験を実施した。 実験2では、運動性認知疲労の生理機構解明を目的とした。計画していた、脳酸素運搬能の関与解明(実験2-2)に先立ち、実験2-1では、認知疲労の生理機構として、トリプトファン代謝、アンモニア代謝の関与が示唆されたため、本研究での認知疲労モデルでもこれらが関与するか検討した。運動習慣のない健常男性成人14名に対し、標高3,500m相当の低酸素環境において、10分間の中強度運動と安静を課した。運動、安静の前後に実行機能課題であるストループ課題を実施し、運動による実行機能の変化を評価した。さらに、運動の前後に採血を実施し、血中トリプトファン濃度、コルチゾール濃度、アンモニア濃度を測定した。その結果、運動条件ではストループ課題の反応時間が遅延し、認知疲労が起こることを再現した。運動前後のトリプトファン濃度、コルチゾール濃度は有意な変化は見られなかった。血中アンモニア濃度は運動後に増加する傾向がみられたが、有意な変化は見られなかった。次に、低酸素下運動、安静前後のストループ課題反応時間と血中トリプトファン濃度、コルチゾール濃度、アンモニア濃度の関係を検証したところ、血中アンモニアにおいてのみ正の相関関係が示された。以上の結果から、運動性認知疲労の生理機構として、血中アンモニア代謝の関連が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画立案時には、運動性認知疲労の生理機構として、脳酸素運搬能にのみ着目していたが、認知疲労の要因として、トリプトファン代謝、アンモニア代謝の関与も想定されたため、当該年度に低酸素環境での運動による認知疲労にトリプトファン代謝、アンモニア代謝の関係について検討した。主な成果は「研究実績の概要」に記載する。 その後、当初計画していた、運動性認知疲労に脳酸素運搬能が関与するか、明らかにするために、脳酸素運搬能の測定に着手した。脳酸素運搬能算出に必要なヘモグロビン濃度、酸素分圧、酸素飽和度を測定する所属研究室の備品(ラジオメーター)の故障と新型コロナウイルス感染拡大により、実験開始が遅れているが、すぐに実験を開始できるよう準備を進めている。 さらに、所属大学登山選手のリストアップを進めており、本年度計画していた、実験3:運動性認知疲労に対する新たなトレーニング法についてもすぐに実験を開始できるよう準備を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
実験2-2として、標高3,500m相当での低酸素環境で中強度運動後に生じる認知疲労の生理機構として、脳酸素運搬能が関連するか明らかにするために、低酸素下運動時の中大脳動脈血流速度を超音波ドップラー計で、血中ヘモグロビン濃度、酸素分圧、酸素飽和度をラジオメーターを用いて測定する。 実験3-1として、大学登山選手と運動習慣のない健常成人に対し、低酸素下運動を実施し、低酸素環境に順化した登山選手では運動性認知疲労が抑制されるか検証する。
|