最終年度においては,主に正面捕球およびバックハンド捕球の各捕球方法における捕球パフォーマンスを分析した.大学硬式野球選手11名を対象に分析した結果,捕球成功率については正面捕球の方がやや高い傾向にあった.また,捕球位置を基準とした捕球時のステップ位置のばらつきについては,バックハンド捕球の方がステップ位置のばらつきが有意に大きかった. これらの結果を踏まえて,研究期間全体の成果について以下にまとめる.本研究は,野球の内野守備における「バックハンド捕球」の有効性を検証し,従来の基本技術のあり方を再考するため,バックハンド捕球における基礎的知見を蓄積することであった.大学硬式野球選手を対象に,守備者から見て右側の打球に対して正面捕球あるいはバックハンド捕球を行った際の,両捕球方法の捕送球パフォーマンスおよび送球動作を主に三次元動作分析法などを用いて分析した.その結果,送球パフォーマンス(ボール保持時間,送球速度,送球精度)の観点からは,打球の右側に回り込む時間的余裕のある場合においてはあえてバックハンド捕球を行う必要性は小さいが,打球の右側に回り込む余裕が少ないほどバックハンド捕球の有効性が高まる傾向にあった.また,両捕球方法を行った際の送球動作を詳細に分析した結果,バックハンド捕球はボール保持時間を短縮しながらも,体幹の捻転を利用して送球できるといった動作特性が認められた. これらの結果から,指導現場においては,バックハンドでの捕球技術を習熟させることによってその後高い送球パフォーマンスを発揮でき,アウトをとる可能性を高められることが示唆された.
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