本研究は,女性アスリートの加速疾走パフォーマンス決定因子を疾走技術,体力の両面から明らかにし,それらに指導者の視点から得られた改善点の情報を加え,機械学習を行うことで加速疾走能力向上のために優先すべきトレーニング課題の診断システムを開発することを目的としている. 令和1年度は,女性アスリートを対象としてデータを収集し,加速疾走パフォーマンスとの関係について検討した.具体的には,15名の女性アスリートを対象に,モーションキャプチャシステムとフォースプレートシステムを用いた加速疾走の動作と力発揮に関するデータ(疾走中におけるピッチやストライド,地面反力,下肢関節の角速度,関節が発揮した正味のトルクなど)を収集するとともに,垂直跳や下肢関節屈曲パワー計測システムを用いて体力面を評価した. 令和2年度は,令和1年度と同様の実験を継続し,計50名の女性アスリートを対象にデータを収集した.収集したデータを用い,女性アスリートの加速疾走パフォーマンス決定因子について,疾走動作や関節周りに発揮された力の観点から検討し,研究成果を発表する準備を進めた.また,指導者へのインタビューから得られた女性アスリートの加速疾走パフォーマンス向上のため改善点についてデータをまとめた.さらに,トレーニング課題の診断システムのための機械学習アルゴリズムについて構築を進めた. 令和3年度は,指導者へのインタビューを継続して女性アスリートの加速疾走パフォーマンス向上のための改善点について知見を蓄積させ,トレーニング課題の診断システムの向上を図った.本研究の結果,女性アスリートの加速疾走能力向上に必要な体力や疾走技術が明らかになり,トレーニング課題診断システムにより,適切な課題を提示できるようになった.このことにより,日本人女性アスリートが世界の舞台で活躍するための一助となることが期待される.
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