本研究では、トレーニング負荷・トレーニング量ともに少ないオフ期、小さな負荷でトレーニング量が多い走り込み期、大きな負荷でトレーニング量の少ないレース期の3期で骨代謝マーカーの比較をこれまでに行ってきた。 対象は大学陸上長距離選手6名とし、オフ期、走り込み期、レース期の3期の比較を行った。筋損傷(クレアチンキナーゼ)は、オフ期と比べ走り込み期で高値を示したことから、走り込み期では筋へのダメージが大きかったと考えられる(p<0.05)。骨代謝マーカーのTotalP1NP/TRACP-5b(骨形成/骨吸収マーカー)においてはオフ期に比べてレース期において高値を示し(p<0.05)、レース期の方が骨形成優位の骨代謝動態を示した。 我々はこれまでに骨吸収マーカーである尿中NTXが疲労骨折時に高値になることを示してきた。そこで、オフ期、レース期、走り込み期後の7日間について尿中NTXの測定を行い、分析を行った。 大学陸上競技部に所属する男子6名を対象とした。測定は、オフ期、走り込み期、レース期の3期とした。各期終了1日後にCKを1回測定し、尿中NTXは各期終了後7日間連続で測定した。尿中NTXの測定は日間変動が大きいとされているため、オフ期の7日間連続で測定したデータの平均値との比較を行った。その結果、CKはオフ期と比べ走り込み期で高い値を示した(p<0.05)。また、レース期後に、尿中NTXの変化はみられなかった。一方で、走り込み期後の尿中NTXの値は、オフ期の7日間平均値と比較して1日後、5日後で低値を示した(p<0.05)。また、走り込み期後の7日間の平均値はオフ期の平均値よりも低値を示した(p<0.05)。これらの結果は、血清データと同様に走行距離が長いトレーニングは、骨吸収を抑制する可能性が示された。
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