本年度は、研究者自身がクライアントとしてパーソナルコーチングを受ける参与観察研究を実施した(1年目、2年目に続き3例目)。3年間、異なるコーチからパーソナルコーチングを受けたことで、それぞれを比較する視点も持ちながら、パーソナルコーチングの作用を体感的に理解することができた。 一方で、今年度は研究者自身がコーチとして、クライアントにパーソナルコーチングを実践する参与観察研究を実施した。コーチ側の視点からの研究を行うことで、クライアント体験とはまた違ったデータや理解の深まりを得られた。 加えて、研究者が第三者的な視点からコーチングを観察する研究も行った。対象(クライアント)の1人目が心理カウンセラーである。よくパーソナルコーチングと比較されるカウンセリングであるが、カウンセリングを詳しく知る者にコーチングを受けてもらうことで、それぞれの違いや共通性を見出すことができた。対象の2人目、3人目は大学生アスリートであった。ビジネスパーソンを対象とすることの多いパーソナルコーチングであるが、対象がアスリートであっても作用し、心理面、社会面(人間関係など)、キャリア形成、そしてチームの状態やパフォーマンスへの好影響があることが示唆された。 そのほか、これまでの研究やコーチへのインタビューをもとにしたコーチングマニュアルの作成や学習プログラムの検討、それらを用いた実践およびデータ収集も実施した。また、昨年設立したコーチング科学研究所の運営を行い、関連団体と今後の研究に向けてのディスカッションを進めている。
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