「研究目的」 骨格筋は、スポーツ動作を含む身体運動中にその長さを伸ばしながら力を発揮する、伸張性収縮を行う場面が多い。高強度の伸張性収縮によって筋損傷が誘発されると考えられている。筋損傷は、遅発性筋肉痛や身体運動パフォーマンスの低下を引き起こすため、筋損傷が生じる詳細なメカニズムの解明は重要な課題である。近位と遠位の二つの関節をまたいで骨に付着する筋を二関節筋と呼ぶ。過去の研究で、二関節筋は筋損傷が生じやすいことや、伸張性収縮に関連したスポーツ傷害が発生しやすいことが報告されている。そのため、二関節筋を対象として筋損傷のメカニズムを解明することができれば、痛みや身体機能の低下を防ぐための効果的な手段の確立につながることが期待できる。本研究では、二関節筋が、運動様式や関節角度の影響を受けて特徴的な振る舞いをみせるという点に着目し、筋損傷のメカニズムを解明することを目的としている。 「研究方法」と「研究成果」 筋損傷の発生はスポーツ外傷の発生に関わる可能性がある。本年度は、筋損傷が生じる伸張性運動時の筋力とスポーツ外傷との関連について検討した。スポーツ選手を対象に、二関節筋を対象とした伸張性運動を実施してもらい、そのときの筋力を計測した。加えて、過去2年にわたって、伸張性運動によって生じる外傷の代表である肉離れ、および膝関節における靱帯断裂を経験しているかどうか、調査を行った。その結果、スポーツ外傷を経験している選手は、経験していない選手よりも、伸張性運動時の筋力が有意に低いことが明らかとなった。
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