研究課題/領域番号 |
19K20061
|
研究機関 | 環太平洋大学 |
研究代表者 |
宮本 彩 環太平洋大学, 体育学部, 講師 (90768079)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | アンプティサッカー / クラッチ走 / 方向転換の数量調査 |
研究実績の概要 |
本研究はアンプティサッカーにおける方向転換の重要性を検証するとともに,方向転換を伴うクラッチ走における動作の仕組みの解明と,動作の習得・習熟法を構築することを目的としている.目的達成に向けて3つの課題を設定しており,2022年度は課題①「アンプティサッカーにおける方向転換の重要性の検証」の研究項目として計画していた「試合中の方向転換の数量調査」を行い,研究成果の公表を行った. 目的は,アンプティサッカーにおける試合映像を基にした定性評価を行い,ゲーム中の方向転換の実態把握を試みることであった.ピッチ全体を斜め上方より撮影した映像を基に,分析者2名で評価を行った.今回の分析では,分析対象選手のボール保持時,アウトオブプレー時および静止状態からの動き出しは分析から除外することとした.評価対象はFW選手2名の試合前半(20分間;インプレー時間13分02秒)であった.評価手順としては,評価対象の選手の動きをコマ送りで確認していき,①方向転換が確認された時間,②方向転換の向き,③移動方向の変化パターンを記録した.なお,分析者両名の評価が一致したもののみを結果として採用した.その結果,方向転換の回数はA選手が62回,B選手が45回であった.方向転換の向きについては,切断足側への方向転換の方が多い傾向(約60%)であった.また,移動方向の変化パターンは,前から横が最も多く(約70%),その他には前から後やバックステップからの方向転換(後から横あるいは後から前)が見られた.本研究の試行により,アンプティサッカーFW選手は相手選手との駆け引きのなかで連続して方向転換を繰り返すことが確認できた.健常者サッカーの先行研究の結果なども踏まえると,やはりアンプティサッカーの競技パフォーマンスを考える上で,方向転換の技術は重要な要素の1つといえるだろう.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在の進捗については,「やや遅れている」と考えている.研究目的の達成に向けて設定した課題3つのうち,課題①「アンプティサッカーにおける方向転換の重要性の検証」については,2021年度に公表した「競技者へのヒアリング調査」から引き続いて2022年度は「試合中の方向転換の数量調査」の成果公表まで至っている. 一方,本研究のメインである課題②「方向転換を伴うクラッチ走動作のスポーツバイオメカニクス手法による仕組みの解明」については,新型コロナウイルス蔓延に伴う行動・活動の規制や自粛の影響もあり,当初予定していた検証実験に着手できていない.しかしながら、フィールドレベルのいくつかのデータ収集と解析は実施しており,それら結果を踏まえ,2023年度に検証実験ができるよう、具体的な研究計画を作成している. また,課題③「方向転換を伴うクラッチ走の習得・習熟に向けたトレーニングならびに指導法の構築」については,研究を着手した頃から現在に至るまで,選手ならびに指導者との意見交換を継続して実施しており,継続的に検討を進めている.特に2022年度はアンプティサッカーワールドカップが開催され,世界のレベルが飛躍的に向上していることを目の当たりにしたことから,今後はさらに海外の動向も含めて探っていく必要があると考えている.
|
今後の研究の推進方策 |
本研究において設定した課題②「方向転換を伴うクラッチ走動作のスポーツバイオメカニクス手法による仕組みの解明」を進めるため,2022年度に加速度計搭載のウエアラブル心拍センサを購入した.この機器を活用するべく,過去に実施した方向転換を伴うスプリントテストの際に記録用として撮影していたビデオ映像を分析している.分析の結果, 30m直線スプリント走のタイムと135°の方向転換が1回伴う30mスプリント走のタイムとの間に高い相関関係が認められた(r=0.832, p<0.01).また,方向転換の位置を示すマークの1歩手前から完全に身体が方向転換後の新たな進行方向側に向いた後の1歩目の接地までに要した時間が短いほど,トータルのタイムも速いことがわかった(r=0.799, p<0.01)。 ただし,ビデオ映像からだけでは減速や加速を正確に評価できたとは言えず,方向転換に要した時間の定義も曖昧な点がある.そのため,2023年度は加速度計の機能を活用し,さらに詳細な方向転換の技術的側面の解明を急ぎたいと考えている.研究の推進にあたり,国内で同様の研究を行っておられる順天堂大学大学院の岸秀忠先生と連携を強化していくことになっている.
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス蔓延に伴う行動・活動の規制や自粛に加え,アンプティサッカーワールドカップの開催に向けた強化事業などもあり,アンプティサッカー選手を集めての測定を実施することができなかった.このため,想定していた旅費,人件費・謝金等の支出がなかった.今年度は実験を実施することを計画しており, 未使用額は旅費,人件費・謝金等に充てることとする.
|