研究実績の概要 |
本研究はアンプティサッカーにおける方向転換の重要性を検証するとともに,方向転換を伴うクラッチ走における動作の仕組みの解明と,動作の習得・習熟法を構築することを目的としている.2023年度は課題③「方向転換を伴うクラッチ走の習得・習熟に向けたトレーニングならびに指導法の構築」に向けて,我々が定期的に実施してきた体力・運動能力のデータの見直しを行った. 加齢に伴う体力・運動能力の低下は,競技を安全に継続していく上での課題と言える.国内のアンプティサッカーの競技者の年齢層をみると,普及が開始から10年以上の年月が経ち,中年期の競技者が増加している.しかしながら,この年代における各体力要素別の加齢変化を検討した縦断研究は乏しい(小坂井, 2021).そこで, 我々がこれまで蓄積してきたデータを基に,アンプティサッカー競技者の加齢に伴うスプリント能力の変化を明らかにすることとした. 研究対象は,2016年から2017年と2021年に実施した2回の体力測定に参加したフィールドプレイヤー8名であった.項目は直線30m走,身長および体重であった.年齢は,1回目の測定時点で40.5±2.5歳,2021年時点で45.0±2.3歳であった.本研究の結果,30m走タイムならびに10-20m区間タイムで測定間に有意差が認められた.30m走タイムでは,経年変化により約0.30秒延長し,変化率は-4.9%であった.スプリント能力の維持に向けては,高い最大疾走速度を発揮する能力とその速度をできるだけ長い区間維持する能力が重要であることがわかった.さらに,適正体重の維持の重要性も示唆された.中年期の競技者においては,競技の専門的なトレーニングはもちろん,個々の身体の状態に合わせた筋力トレーニングや有酸素運動に取り組むことも重要といえる.また,縦断的な視点で体力の測定及び評価を実施していくことが求められる.
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