本研究は、対戦型の球技スポーツ (卓球と野球) における一流競技者の優れた対応能力を明らかにし、高めるべきスキル要素を明確化することであった。 2019年度は、卓球において相手選手のスイング動作と向かってくるボールの視覚情報量がインパクトの正確性にどれだけ影響するのかを、国際レベルの上級者群(5名)と大学卓球部員の中級者群(6名)で比較した。対象者には遮蔽ゴーグルを装着させ、相手選手の打ったボールが途中まで見える条件から、相手選手のスイングの途中で視界が遮られる高難度の条件までをランダムにレシーブさせ、エリート選手ほど少ない情報量でもボールの到達位置を正確に予測できるのかを調査した。その結果、視界が遮蔽されるタイミングとインパクト誤差の関係に競技レベルの差はなく、上級者の予測能力が中級者よりも優れているという根拠は示されなかった。 2020-2022年度は、野球の一流打者に有する共通したスキルを明らかにするために、打撃パフォーマンスを4つのスキル(スピード、コンタクト、タイミング、選球眼)に分解し、各要素を独立してスコア化する方法論を確立した。ストレートとチェンジアップの緩急をつけたボールをピッチングマシンによりランダムで100球投じ、22名のプロ野球選手に試合同様の意識で打たせた。打撃動作は、2台のハイスピードカメラ(1000fps)により記録された。その結果、競技レベルの高い選手ほど、4つの要素が全て一定以上の水準にあり、著しく劣るスキルは存在しなかった。反対に、競技レベルの低い選手ほど、明らかに劣る要素が存在したり、4要素全てが低スコアになっていた。 以上より、卓球でも野球でもパフォーマンスを構成する1つの要素が優れているだけでは一流選手にはなれないことから、自身の欠点を補うような練習を優先的に取り組んでいくことが大事と考えられる。
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