研究課題/領域番号 |
19K20073
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研究機関 | 鹿屋体育大学 |
研究代表者 |
竹中 健太郎 鹿屋体育大学, スポーツ・武道実践科学系, 准教授 (90506297)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 右足踵痛 / 踏み込み動作 / 踏込み音 / 地面反力 |
研究実績の概要 |
本研究は、剣道において多く見られる外傷の一つ「足踵部の痛み」を軽減するため、踏み込み動作時に床と右足の接触時より発生する音(踏み込み音)と動作との関連性を手掛かりとして、踏み込み動作の改善方法を検討するものである。 初年度である2019年度の前期においては、まず120名の大学剣道選手について「右足踵痛の痛みのレベル」の調査を実施した。その結果、大学1年生に踵痛を自覚する選手が最も多く、学年が上がるにつれて踵の痛みを自覚する選手は減少する傾向がみられた。このことは調査対象者の所属する稽古環境が踵を保護するサポーターの使用を控えさせていることが理由として推察された。つまり、踵痛を持つ選手が自発的に踏み込み動作に工夫を施し、踵痛を改善しているものと考えられる。調査結果により、測定を実施するための被検者の選定行うと同時に、今後は踏み込み動作の測定、分析と並行して、上級学年で踵痛が改善された選手について、その改善方法を調査する予定である。 2019年度の後期においては、対象群を設定した本格的な測定に先立ち、右足踵部痛を改善させたある一人の競技者の踏み込みに着目し、その事例から踏み込み動作とその動作による地面反力、踏み込み音の違いを検討した。その結果、ある競技者の右足踵部痛改善の要因は、踏み込んだ瞬間に床面から右足が受ける衝撃力(地面反力)の低下であり、それには踏み込み脚大腿の挙上が低く、踏み込み脚中足趾節関節が底屈した踏み込みフォームへの動作修正が影響したものと推察された。また、踏み込み動作の修正とその力発揮の変容によって、踏み込み音が高く大きな音に変化し、打突評価が高まる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度(2019年度)初旬において計画していた「①剣道選手120名に対する踵の痛みのレベルについての調査」は、予定通り実施し、そのデータから被検者を選定することが可能な段階にある。 初年度後半に計画していた「②痛みのレベル毎の被検者における踏み込み動作の解析と床反力の測定」については、測定人数や対象動作等を鑑みて時間的、労力的にも大規模な測定となる。したがって、対象群を設定した全体の測定に先立ち、研究全般の方向性についてその妥当性を検証しておくことが不可欠と判断し、一人の右足踵痛を改善した競技者を対象として予備的な測定を実施することとした。改善前後においての踏み込み動作の解析、及び床反力、踏み込み音を比較し、違いを明らかにするとともに、当該競技者の踏み込み動作におけるフォーム改善のポイント(コツ)についても明らかにした(論文としてスポーツパフォーマンス研究に投稿中)。 この結果から、踏み込み動作の改善は踏み込みの音(踏み込み音)に反映されることが示唆され、本研究の見通しとして確かな手ごたえを得たものと判断している。なお、上記の予備的な測定は、動作の解析、地面反力、踏み込み音の解析ともに本実験で計画している測定と同様の方法を用いた。したがって、2020年度は、同様の方法で対象群を設定し、「②動作の解析、地面反力の測定」、「③踏み込み音の解析」について同時展開で測定を実施する予定である。対象群による測定(②動作の解析、地面反力の測定)が遅れているものの、予備的な測定を実施したことにより確かな見通しが立てられたことから、本研究はおおむね順調に進展しているものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度初旬に計画していた「①剣道選手120名に対する踵の痛みのレベルについての調査」については、すでに実施済みである。しかし、2019年度後半に計画していた「②痛みのレベル毎の被検者における踏み込み動作の解析と床反力の測定」については、本研究計画における測定人数や対象動作等を鑑みて時間的、労力的にも大規模な測定となることから、2019年度後半は、計画を変更し予備的な測定(実験)を行い、本研究全般の見通しについてその妥当性を確認することとした(結果の予測についての妥当性が確認できた)。 2020年度前期においては、2019年度後半に実施した予備実験をモデルに、「② 痛みのレベル毎の被検者における踏み込み動作の解析と床反力の測定(申請時は2019年後期に計画)」と2020年度前期に計画している「③ 痛みのレベル毎の踏み込み音の特徴の調査(踏み込み音の解析)」とを同時展開で測定し、解析・分析を実施する予定である。 2020年度後期から2021年度にかけては、申請時の計画通り「④ 踵の痛みが発生しにくい踏み込み動作への改善方法の提案」に取り組む予定である。トレーニングの具体的な期間や内容は、②~③の過程における研究結果を鑑みて適切に具体化する必要があるが、一人の競技者を対象とした予備実験においては、「踏み込み脚中足趾節関節が底屈した踏み込みフォームへの動作修正(「剣道における右足踵部痛改善前後の踏み込みの動作と地面反力,音の違い」、スポーツパフォーマンス研究:投稿中)」が改善のポイントであったことを鑑み、踏み込み動作において踏み込み時の右足の指先を曲げる動作を定着させるトレーニングを改善方法として提示したいと考えている。なお、本研究の成果の公表については、学術論文(実践研究)としてスポーツパフォーマンス研究への投稿を予定している。
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