本研究は、日本の中学校保健体育カリキュラムの改善を目的としている。そのため、1年次はアメリカ体育関連書籍(SHAPEAmerica、2014;Siedentopら、2011等)の翻訳及び分析を実施した。アメリカのナショナルスタンダードは、運動領域ではなく5つの学習領域別に内容が構成されており、日本よりフィットネス教育の内容が充実していたことを明らかにした。 2年次は大学生への質問紙調査により日本の学習指導要領の学習内容に対する習得率の実感と運動実施率の関係について、相関がなかったことを明らかにした。 3年次はコロナ過のため高橋健夫の体育論の展開とインタビューガイドについて整理した。 4年次は日本におけるスポーツ教育の実施と習熟過程について、小学校と中学校と大学の先生1名ずつについて事例的に大単元の実施が難しい中でも生涯スポーツの振興や役割学習の成果を明らかにした。 5年次はアメリカのミズーリ州の私立学校グリーンウッドラボラテリースクールへ現地調査及びインタビューを実施した。 この学校では、ハイテクノロジーで個性を尊重し、インクルーシブな社会であり充実したフィットネス教育が施されていたことを明らかにした。 研究期間全体を通じて、日本の中学校体育カリキュラムはスポーツ種目に共通した知識及び技能、思考力・判断力・表現力、主体的に取り組む態度に関する学習内容がアメリカより多く、教師へのインタビューによる実感調査より学習内容の精選と改善が必要との見解があった。
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