昨年度まで新型コロナウィルス感染症(COVID-19)拡大の影響により、介入研究の実施が困難な状況であった。最終年次となる今年度は、映像による運動プログラムを用いての効果測定と検証を行った。運動の内容は、専門家に依頼して作成したオリジナルの音楽に合わせて行う約4分のリズム体操と自体重を負荷にした筋力トレーニングであった。対象地は、瀬戸内海に位置する離島であった。対象者は、離島で自立した生活を送る男性高齢者19名であった。運動群(9名、77.2±3.1歳)には運動プログラムが収録されたDVDとDVDプレイヤーを配付して自宅で2ヶ月間実践してもらい、その前後での効果測定を実施した。対照群(10名、77.5±5.5歳)には、体力測定及び質問紙調査のみ実施した。調査期間中の歩数を計測するため生活習慣記録機を対象者に配布した。効果判定項目は、体力測定(握力、開眼片足立ち、10m障害物歩行)、質問紙調査(自作の日常生活アンケート、SF-8、POMS2短縮版、認知・生活機能質問票)、脳の血流変化(機能的近赤外線分析法:NIRS)を用いた。結果、1日の平均歩数は運動群3875.0±1570.0歩、対照群3224.9±1494.0歩であった。両群とも日頃から農作業に従事している者の割合が高かった。体力測定の結果、両群とも介入前後の10m障害物歩行の平均値は、統計的に有意な差であった。質問紙調査および脳の血流変化には著変は認められなかった。本研究期間中に新型コロナウイルス感染症拡大により、高齢者の外出頻度が減少し身体活動量低下が社会的課題となった。本研究結果においては、運動介入による十分な成果が得られたとはいえないが、高齢者が自宅で運動実践できるといった取り組みは、遠隔地の運動介入方法のモデルの一つになりうると考えられた。
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