研究課題/領域番号 |
19K20095
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
大澤 智恵 武庫川女子大学, 音楽学部, 准教授 (90726093)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 鍵盤 / 空間認知 / 視覚 / 聴覚 / 運指 |
研究実績の概要 |
これまでに行ってきた鍵盤楽器の演奏における知覚情報や記憶の利用に関する研究成果を俯瞰すると、一般的にピアノの演奏においては視覚情報が打鍵位置コントロールに必須であるといえるが、よく練習された音形や跳躍のない音形の演奏においては必ずしも視覚情報が得られなくても正しい位置への打鍵が可能である。本研究では、より小さく演奏者が保持するような鍵盤楽器と、演奏を指ではなくマレット等の動きで、上肢1本につき1点の連続的なコントロールで行う、より大きく打鍵前に鍵盤面を触ることがほぼない鍵盤楽器とをピアノと比較する。本年度は、仮説の精査と実験実施に向けた環境の整備を行いつつ国内外の共同研究者・研究協力者との打合せを行う予定であったが、後者については2月から3月の出張が難しい状態となったために、再スケジュールの必要性が生じている。前者については、芸術大学の打楽器専攻の学生など熟達者との人脈をつくり、議論できる状況を整えつつある。ピアノと異なり、鍵盤ハーモニカやマリンバ等の熟達者は数がかなり限られるため、実験参加者の確保が本研究がクリアすべき課題として挙げられる。熟達者を探すことに加え、音楽経験者に一定期間集中して練習を依頼し、短期的な上達による変化に注目する形で研究を進めることも視野に入れている。 本年度は、初年度として、ピアノ以外の鍵盤楽器のスキルのメカニズムに関する研究、あるいはそれらへのニーズを、文献調査および学会での動向調査として探索した。先行研究は少ないが、鍵盤楽器のスキルの普遍性という意味では左右反転鍵盤の学習に関する研究(Pfordresher & Chow, 2018)の知見が本研究に関わりが深いと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究動向の調査、これまでの研究で用いた方法や結果をもとにした実験方法の検討などを行い、実験準備を進めてきているが、年間スケジュール上特に研究を進める上で重要な2月から3月にかけて、感染症対策および新年度に予想された事態への本務上の準備に追われるなどし、また出張ができなかったことによる打合せの不足などもあり、本研究課題の実験そのものの準備や遂行が思うようにできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに作成した実験計画に沿って、必要な物品の購入及び実験参加者のリクルートを行い、対面実験が可能になり次第実験を開始することができるよう準備を進めるが、感染症の動向によっては対面実験の遂行が当分難しくなる可能性もある。その場合には、特に協力いただける参加者を少数でも確保し、相応の謝金を支払って、機材を送付し、実験条件の整備を遠隔でおこない、MIDIデータもしくは録音データを送付していただくことでデータの収集をすることを考えている。また、オンライン質問紙での調査をデータとして加える、これまでに得た実験データを別の角度から分析することで新たなモデルづくりに取り組む、といった、主たる実験計画とは異なる調査・分析などを加えることで、引き続き、方向やサイズの異なる鍵盤楽器演奏技能メカニズムの解明に取り組んでいく予定である。所属大学での授業期間中には、教育業務(遠隔授業および、遠隔授業と対面授業の混合)で多忙をきわめ、研究推進上これまでにない困難な状況にある。夏期や春期の少しでもまとまった時間が取れる時期を実験実施時期として狙い、準備を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度内に、研究打合せによる旅費、実験準備のための物品費、実験参加者および研究補助者のための人件費等を支払う予定であったが、特にその執行がある予定であった2月・3月に、感染症の影響で打合せができなかったり、その影響もあり実験準備が予定より遅れたりしたために次年度以降に繰り越すこととなった。また、PCの購入も予定していたが、前の研究プロジェクトで購入したPCが引き続き十分に使用可能であったため、本年度の購入は見送り、次年度以降に実験用PCを購入する予定である。
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