本研究課題は、運動前飲料摂取が運動時の脱水予防および運動パフォーマンスに及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。運動前または運動中に飲料を摂取した際の持久性運動能力を検討することは、それぞれの摂取タイミング毎の影響を明らかにできるものと推測する。中立温度の飲料に着目し、摂取タイミングの違いが暑熱環境下における運動時の持久性運動能力に及ぼす影響について検討した。対象者は、健康な成人男性であった。暑熱環境に設定した人工気象室で自転車エルゴメータ運動を60分間実施した。運動負荷は、主観的運動強度(Rating of perceived exertion:RPE)を用いてRPEが13(ややきつい)の負荷強度とし、持久性運動能力の指標とした。実験条件は、飲料摂取なし条件(無飲料条件)、飲料摂取あり3条件(運動前条件、運動中条件、運動前・中条件)とした。まず無飲料条件を実施し、無飲料条件の体重減少量と同量の中立温度に設定したスポーツ飲料を飲料摂取あり3条件で摂取させた。各条件は、対象者毎に同一の時間帯に実施した。測定項目は、運動負荷、心拍数、直腸温、皮膚温、主観的感覚および一致タイミング課題とした。運動負荷は、飲料摂取あり3条件において有意な差はみられなかった。このことから、暑熱環境下における運動時の持久性運動能力には、中立温度飲料の摂取タイミングの違いによる影響はみられない可能性が考えられた。
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