研究課題/領域番号 |
19K20112
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
砂野 唯 名古屋大学, 生命農学研究科, 特任助教 (20748131)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 酒 / 発酵食品 / 食文化 / エチオピア / ネパール / 健康 |
研究実績の概要 |
本研究はネパールとエチオピアのそれぞれで暮らす酒を主食とする習慣を持つ民族とその周辺の酒を嗜好品として消費する民族のA)酒の成分や消費の仕方、B)身体機能の特徴や健康状態、C)地域の環境的特性を比較し、前者のみが健康を保っている要因を解明することを目的としている。 日本の酒蔵や醸造所をめぐり、清酒の材料や醸造方法、各醸所で主流となっている味などについて、聞き取り調査した。また、日本において過去に酒が栄養源となっていたという記録を収集した。そして、日本とエチオピア、ネパールのデータを比較し、①主食とされる酒と嗜好品とされる酒に、どのような違いがあるのか、②栄養源だった酒が消えた要因、③栄養状態の良い日本において好まれる酒の味、④酒の味を決定する要素や地域性について、分析した。 結果、①エチオピアやネパールで食事とされる酒は、清酒に比べて、うま味成分が多く含まれ、アルコール濃度が低いこと、②東北や中国地方の山間部では、戦前、季節的にアワやヒエから造った雑穀酒を朝食や夕食の代わりにしていたこと、③食事内容が豊かな日本では、酒そのものの味というより、食事との組み合わせによって清酒の味が選ばれ、かつ食事を邪魔しない味の清酒が好まれる傾向にあること、エチオピアとネパールではアルコール濃度を意識して飲酒するが、アルコール濃度について消費者は意識せずに購入売る傾向があることがわかった。④酒の味の決定要因や地域性については、水・麹・酒米・製法など複雑な要因が絡むため、明確な結果を得ることはできなかった。 また、これまでエチオピアとネパールで収集したデータを解析し、主に日常と非日常における酒の使い分け、グローバル化が食事となる酒を嗜好品へと変えた現象についてまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで集めたデータの解析から、A)酒の成分や消費の仕方については明らかになりつつある。これからのフィールド調査によって、酒を主食にする人々のB)身体機能の特徴や健康状態、C)地域の環境的特性についても、十分、調査が進められると考える。
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今後の研究の推進方策 |
コロナの影響で、今年度の海外渡航は難しいと考える。そのため、これまで収集したデータの解析を勧めつつ、国内の酒をはじめとする発酵食を多用する地域でのフィールドワークも進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
国外調査を実施せず、国内でのフィールドワークを実施した。そのため、現地でのフィールドワークにかかる謝金、検体の輸送費と分析にかかる雑費、物品費に誤差が生じた。 前年度、実施できなかった調査内容を今年度から実施する際に、合わせて使用する予定である。
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