本研究はネパールやエチオピアで暮らす酒を主食とする習慣を持つ民族と、酒を嗜好品として醸造し消費する民族を比較し、前者が健康かつ長寿である要因を解明することを目的としている。 本年度は、酒を主食とする民族としない民族の把握、彼らの飲む酒の材料や醸造方法、飲酒期間、飲酒方法、その地域の環境を比較するために、ケニア南部のキスム周辺地域とタンザニアの中央部から北部にかけて広域調査を実施した。その結果、ケニアでもタンザニアでも、国産ビールの流通が急速に拡大しており、近年は都市住民に加えて農村住民からの需要も高くなっていることがわかった。その反面、地酒を醸造する地域や世帯は減少している。ケニア南部では自家醸造は限定的で、農村で消費する酒は蒸留酒が主流である。また、地酒の栄養源(食事)や飲料としての利用は確認できなかった。タンザニアでも日常的な自家醸造は稀であった。しかし、数少ないながら、日常的な醸造習慣をもつ地域では自覚的に飲料、自覚なく栄養源とされていることが確認できた。今後、これらの地域で飲まれる酒の栄養価と消費エネルギーを分析することで、身体への酒の摂取効果を調査していく方針である。 また、エチオピアやネパールの酒を主食とする人々については、都市住民の協力を得てオンライン調査を実施した。人々からは、新型コロナウィルス感染症の拡大による影響、継続的に聞き取りしてきた食事内容や健康状態、性別・年齢層ごとの食の好みに関する情報を収集した。 国内では昨年度から継続して、山間部地域における越冬時の濁酒の利用に関する聞き取りを実施した。
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