近年,免疫チェックポイント阻害剤によるがん免疫療法が劇的な効果をあげ,患者が本来もっている免疫力の大きさを再認識させた.免疫力が患者の栄養状態によって左右されることは知られているが,栄養状態ががん微小環境における腫瘍免疫にどのような影響を与えているかはいまだ解明されていない.そこで「栄養状態が局所の腫瘍免疫にも反映されており,栄養状態が不良だと腫瘍免疫が十分機能せず腫瘍進展を抑えられなくなるのではないか」との仮説のもとに,①肺癌患者における栄養状態と,腫瘍浸潤リンパ球やPD-L1発現状況などを含むがん微小環境との関連を明らかにし,②栄養状態・栄養療法が,がん微小環境にどう影響を与えるかを動物モデルで前向きに検証することを本研究の目的とする. 肺癌手術例における術前栄養状態とがん微小環境との関連の解明を目的に,肺癌手術検体で,がん微小環境に関連するマーカーを免疫組織染色を用いて評価する準備を進めた.リンパ球・腫瘍におけるPD-1・PD-L1の発現,細胞傷害性Tリンパ球(CTL)・制御性Tリンパ球(Treg)などの腫瘍浸潤リンパ球に関連するCD3,CD4,CD8,Foxp3,CD20,がん微小環境の調整に関わるTGF-β,IFN-γなどのサイトカインの染色性の検証を行った.同一検体内で多重染色法を用いて標的細胞を抽出する手法の検討を進めている.また,対象症例の術前の栄養状態(PNI値,血清アルブミン値,末梢血リンパ球数,BMIなど)やその他の臨床病理学的背景を含むデータベースを作成し,術前栄養状態と肺癌手術治療における短期・長期予後の関連を検討した.
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