研究課題/領域番号 |
19K20121
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研究機関 | 北海道科学大学 |
研究代表者 |
山 佳織 北海道科学大学, 薬学部, 講師 (60780559)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 認知症 / シアニジン-3-グルコシド / 抗酸化作用 |
研究実績の概要 |
既存の認知症治療薬では、症状の改善は難しく、進行の抑制に留まっている。そのため、認知機能低下の改善方法や予防法の開発の必要性がより一層高まっている。しかし、現在までに開発された合成化合物は、いずれも予想以上の細胞毒性が認められたり、期待された薬効が十分に得られないことが原因となり、上市されていない。今までの治療ターゲットは、認知症の原因である異常タンパク質の蓄積を抑制するもので、実際には認知機能は改善せず進行してしまうとの報告もある。現在までの探索化合物や治療ターゲットでは開発・治療に至らないことから、新たな視点から取組む必要があると考えた。本研究では、日常的に摂取される食品成分であるシアニジン-3-グルコシド(C3G)に着目し、中枢神経細胞における神経保護作用と抗酸化作用に対するC3Gの影響について検討することにより、認知機能の改善や低下の予防の可能性について検討を行うことを目的とした。当該年度においては、前年度明らかにしたC3GによるSirt1 mRNA発現量の増加をもとに、Sirt1タンパク質発現量の増加を明らかにし、さらにはその活性測定法の確立および活性の定量を行った。また、ラジカル発生剤が誘導する細胞傷害をC3Gが抑制することを明らかにした。上記に加え、C3Gが細胞内の抗酸化酵素であるスーパーオキシドジスムターゼおよびカタラーゼのmRNAおよびタンパク質発現量を増加させることを明らかにした。これらのことから、C3Gは神経細胞傷害に対して抗酸化因子を増加させることにより細胞保護作用を示す可能性が示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画調書に記載した予定通りおおむね進行している。また、前年度条件設定の難しかった細胞障害誘導物質の選定についてもいくつか候補を絞ることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
C3Gによる細胞障害抑制のメカニズムを検討するために、抗酸化因子の発現を制御するとされる転写因子の発現量や活性化、マイクロRNAの発現量について検討を行う。また、これら制御因子のノックダウン細胞の作成を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在細胞培養に使用しているCO2インキュベーターが経年劣化により交換が必要であるため、備品として購入を予定しており、そのため次年度使用額が生じた。
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