研究実績の概要 |
褐色脂肪組織はエネルギー消費の亢進および糖代謝やインスリン感受性の改善に効果がある事が発見され、肥満や生活習慣病予防の指標として注目されている。しかし、通常褐色脂肪組織の測定はFDG-PET/CTが用いられており、乳幼児、児童、妊婦、褥婦には侵襲性が強く不向きであったが、近年開発された近赤外時間分解分光法を用いる事により、どのような年齢・条件においても非侵襲的に、簡便に、褐色脂肪組織のデータ採取が可能になった。そこで①安全性の確立された近赤外時間分解分光法を用いて、今まで測定困難であった乳幼児期・児童、妊婦、褥婦の褐色脂肪組織を測定、基準値データを取得すること、②褐色脂肪組織に影響を与える因子(生活習慣および液性因子メタボロー ム)について検討すること、そして、褐色脂肪組織に影響を及ぼすと考えられる遺伝的素因、環境的素因を羅列的に評価することで、肥満予防や生活習慣病予防法を検討することを目標とし、研究を開始した。 2021年度は論文2本が採択された。1つは大人の褐色脂肪組織とアミノ酸との関連についてであり、アミノ酸値と身体組成より、褐色脂肪組織密度を予測することに成功した(Kuroiwa et al, J Clin Med, 2021)。また、乳幼児の褐色脂肪組織については、先行研究の大人同様、こどもも褐色脂肪組織密度が高いとカウプ指数が低く、皮下脂肪組織も薄いことを発表した(Kuroiwa et al, Obesity Science & Practice, 2021)。 2020年度はCOVID-19により実験を行えなかったが、2021年度は感染に細心の注意を払いながら実験を行い、新たにこども127名、女性10名のデータを収集することができた。3年間で、夏季こども150名とその親、冬季こども427名とその親、妊婦25名の測定を終えた。引き続きデータ解析を行っていく。
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