近年の急速な肥満児増加原因あるいは体重のセットポイント現象発現を解明するためにUcp3欠損(KO)マウスを用いてヒト中高年齢相当期までの糖・脂質代謝指標や脂肪細胞サイズ変化に及ぼす幼若齢~青年期相当期の運動および給餌制限の影響を比較・検討する。 5週齢~17週齢まで回転ケージを用いた自発運動を行い、その後、29週齢時まで自由摂食、安静を維持させたWTおよびKOマウス幼若齢期運動群、5週齢~29週齢時まで安静維持させた安静維持群に分けた。体重量および走行距離は、毎週測定した。介入終了後、酸素摂取量、二酸化炭素排泄量、エネルギー消費量および呼吸商を測定した。その後、尾静脈採血を行い、血糖値を測定した。解剖時には心臓からの全採血を行い、大腿四頭筋、腓腹筋およびヒラメ筋を摘出し秤量した。 体重量に関しては、WTマウス幼若齢期運動群は17週齢で運動を中止し、安静維持させてもWTマウス安静維持群に比較して有意な低値が持続した。WTマウス安静維持群のエネルギー消費量がKOマウス安静維持群に比べて暗期において有意な高値を示した。一方、呼吸商は明期において、WTおよびKOマウス幼若齢期運動群が安静維持群に比べて有意な高値を示し、運動群で糖質優位ということが明らかとなった。血糖値やインスリン値では有意差はみられなかった。幼若齢期の運動によって、Ucp3遺伝子発現量の増加・維持が認められるのかWTマウスを用いて確認した。その結果、ヒラメ筋で有意差はみられなかったものの、高値傾向がみられた。 以上をまとめると、幼若齢期の運動によってWTマウスの体重低下が実験終了時まで持続し、体重のセットポイント低下にUCP3が関与している可能性が示された。また、WTマウスの暗期のエネルギー消費量がKOマウスに比べて有意な高値を示したことから、UCP3がエネルギー代謝亢進に寄与している可能性も示された。
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