本研究課題では、朝型・夜型などのクロノタイプ、社会的時差ボケ、時計遺伝子発現リズムの3つの観点から生体リズムを評価し、個人や対象者特性ごとでの食後代謝を比較した。初年度は、若年者を対象に朝型・夜型質問紙ならびに時計遺伝子発現リズムで生体リズムを評価し、朝型群ならびに時計遺伝子発現のピーク時刻が早い群では、朝食時における食後インスリン濃度が高かった。これらの結果は、クロノタイプや時計遺伝子発現による生体リズムの違いにより食後糖代謝が異なることを示している。2年目以降は、新型コロナウイルスによるヒト試験の制限により高齢者や糖尿病予備軍を対象とした研究実施は難しかったため、若年者を対象とした食事タイミング・絶食時間と食後糖代謝の関連を検討した。その結果、夜間の絶食時間が長いヒトほど時計遺伝子発現リズムで評価した生体リズムが良好であること、また起床後から朝食時間まで時間が短いことと生体リズムが良好であることが関連するなど食事タイミングと生体リズムの観点からの知見が得られた。また絶食時間と糖代謝への影響を検証した結果では、夜間の絶食時間が長いことが朝食時における食後血糖値およびインスリン濃度が低いことと関連することが示されている。これらの結果を踏まえ、3年目では、絶食のタイミング(夜間と日中)の違いが食後糖代謝に及ぼす影響を検討した。この検討から、日中の絶食は、夜間の絶食と比較してその後の食後血糖値を高めることが示された。本研究課題を通して、個々人の体内時計(朝型・夜型などのクロノタイプ、時計遺伝子発現リズム)と食後糖代謝との関連が明らかになった。また起床から朝食までの時間などの食行動、絶食のタイミング(夜間と日中)が、その後の食後糖代謝に影響を及ぼす可能性が示された。
|