本年度は,2型糖尿病患者を対象に,定期的な階段昇降運動による長期的な血糖コントロール改善作用について検証するため,介入・観察およびデータ収集・解析を行った(論文投稿中). 進行した糖尿病合併症がない2型糖尿病患者16名を対象とし,階段昇降運動の実施群と非実施群の2群に無作為に分け,12週間観察した.階段昇降運動は各対象者の自宅にて行い,1階から2階までを往復する3分間の運動を2セット行うことを1セッションとし,食後60分かつ/または120分に1セッションずつ実施するよう指示した.頻度は1週あたり12セッション以上かつ実施日が3日以上となるよう設定した.昇段速度は80~110 step/min,降段速度は自由とし,自覚的運動強度はBorg指数で11~13を目標とした.最終的に各群7名ずつが研究を終了した.非実施群に比して,実施群ではグリコアルブミン値が有意に改善した(P<0.05).また,膝関節伸展筋力値(トルク体重比)は実施群において有意に増加した(P<0.05).以上の結果より,12週にわたり食後に短時間の階段昇降運動を行うことで,血糖コントロールおよび膝関節伸展筋力が改善することが示された. 今回の研究助成期間を通し,短時間の階段昇降運動による血糖コントロールへの短期効果および長期効果を明らかすることができた.階段昇降運動は,日常生活での実施が容易かつ自覚的な辛さの少ない高強度運動であり,糖尿病の運動処方において新たな選択肢となることが期待される.
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