研究課題/領域番号 |
19K20131
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研究機関 | 第一薬科大学 |
研究代表者 |
古賀 貴之 第一薬科大学, 薬学部, 助教 (80733279)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アレルギー性接触皮膚炎 / メチオニン / ジメチルグリシン / Bhmt / Selenbp1 |
研究実績の概要 |
本研究では、アレルギー原因物質への接触によって生じる皮膚炎(アレルギー性皮膚炎)に対する新規治療戦略の創成を目指し、メチオニンの摂取によるアレルギー性皮膚炎の軽減効果に着目した検討を実施している。現在までに、メチオニンによるアレルギー性皮膚炎軽減効果はマウスの種類によって効果が大きく異なる、すなわちメチオニンによる軽減効果にはマウス系統差があることが示唆されている。前年度は、Selenbp1は皮膚-肝連関に基づいて皮膚炎による肝Bhmt発現量の変化をコントロールすることで、メチオニンの皮膚炎軽減作用を調節している可能性を見出した。 そこで、当該年度ではSelenbp1によるメチオニンの皮膚炎軽減作用の調節へのBhmt発現変動の寄与について検証を行った。Bhmtはメチオニン代謝に関与する酵素であり、ベタインとホモシステインからメチオニンとジメチルグリシンを産生する酵素である。そこでメチオニンによる皮膚炎軽減作用が認められないマウス系統へジメチルグリシンを投与したところ、有意な皮膚炎軽減作用が観察された。この結果より、メチオニンの皮膚炎軽減作用のマウス系統差は、皮膚炎によるBhmt発現抑制に伴うジメチルグリシン産生の撹乱に起因する可能性が示唆された。しかしながら、メチオニン・ジメチルグリシン非投与マウスについて、皮膚炎による肝Bhmt発現抑制のマウス系統差と皮膚炎によるジメチルグリシン血清中濃度の変化のマウス系統差には相関がみられなかったことから、ジメチルグリシンは直接的に皮膚炎を抑制する可能性は低いことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Bhmtの代謝産物であるジメチルグリシンがメチオニンによる皮膚炎軽減作用の本態である可能性が見いだせた。しかし、血中ジメチルグリシン濃度の変動とメチオニンによる皮膚炎症状の抑制効果のマウス系統差の間には関連がなかったことから、ジメチルグリシンの作用点は皮膚そのものではないことが推定できた。また、皮膚炎による肝臓Bhmt発現量の変化と皮膚炎症状の抑制の間にはジメチルグリシン以外に何らかの介在因子が存在することも推定できたが、その特定には至っていない。また、Selenbp1によるBhmt発現制御機構や皮膚-肝連関に基づくアレルギー性皮膚炎による肝Selenbp1そのものの発現制御機構についてはより詳細に検討する必要があると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
メチオニンによるアレルギー性皮膚炎軽減作用が認められたマウス系統(以下、感受性マウス)および軽減作用が認められなかったマウス系統(以下、非感受性マウス)の比較検討を通じて研究を行う。 皮膚炎による肝臓Bhmt発現量の変化と皮膚炎症状の抑制作用の間(皮膚-肝連関)に存在する介在因子の特定について、メチオニン投与/ジメチルグリシン投与/未投与の非感受性マウスを比較検討することで、メチオニン投与や非投与マウスでは観察されない、ジメチルグリシン投与マウス特異的な変化を示す因子の探索を行う。なお、皮膚-肝連関における介在因子の探索であるため、介在因子は皮膚と肝臓をつなぐ血液中に存在すると想定されたことから、血清を対象として探索を行う。さらに、探索した因子について、メチオニン投与の感受性マウスでも同様な変化を示すか検収することで、介在因子としての特定を行う。 また、感受性および非感受性系統のマウスを用いてアレルギー皮膚炎モデルを作製し、アレルギー性皮膚炎により変動する生体内因子のうち、感受性・非感受性マウスそれぞれに特徴的な変動を示す因子の探索を行う。これらにより得られた候補因子については、培養肝細胞などを用いて、Selenbp1やBhmt発現への影響の確認を引き続き行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響により学会がオンライン開催となり学会参加に係る旅費を当初の計画より安く抑えることができたこと、および新型コロナウィルス感染対策のため研究活動が制限されたことにより、次年度使用額が生じた。必要経費として計上した予算の全てを動物実験に係る消耗品費として使用する予定である。
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