本研究では、アレルギー原因物質への接触によって生じる皮膚炎(アレルギー性皮膚炎)に対する新規治療戦略の創成を目指し、メチオニンの摂取によるアレルギー性皮膚炎の軽減効果に着目した検討を実施している。現在までに、このメチオニンによるアレルギー性皮膚炎軽減効果はマウスの種類によって効果が大きく異なる(マウス系統差)ことが示唆されているが、その詳細な機構は不明である。 本研究では、マウス系統ごとのアレルギー反応に対する共通性や非共通性の解析より、そのマウス系統差には、皮膚-肝連関に基づく、アレルギー性皮膚炎による肝臓のメチオニン代謝酵素Bhmtの発現抑制およびそれに伴うジメチルグリシン産生抑制の系統差に起因することを見出した。さらに、このBhmt発現抑制のマウス系統差は、アレルギー性皮膚炎によるSelenbp1発現制御が関与していることも見出した。しかし、Selenbp1タンパク質そのものはアレルギー性皮膚炎の発症や進行機構そのものには関連がないことが示唆されており、その制御はメチオニン投与時に限定的であることが示唆されている。 当該年度では、Selenbp1欠損によって、肝臓Bhmt発現抑制が消失すること、およびそれに伴いジメチルグリシン産生抑制も解除されることを確認した。 以上の結果より、アレルギー性皮膚炎の新規治療戦略の創成において、Selenbp1タンパク質は、その働きを阻害することでメチオニンの皮膚炎軽減効果を増強するという、間接的な治療戦略の標的となり得ることが示唆された。
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