研究課題
慢性疲労症候群は長期間の強い全身倦怠感などをもたらし、うつ病や過労死などを引き起こす深刻な社会問題となっている。そのメカニズムは不明のため、診断・治療法は確立されていない。本研究独自に開発した慢性疲労モデルは自発行動量回復遅延をはじめ、負荷休憩中睡眠量の経時変化や強制水泳時間の低下、酸化ストレスの上昇に加え、ストレス関連ホルモンの上昇やネガティブフィードバック調節異常等を示した。例えば、動物を疲労負荷させた直後に、血中食欲増進ホルモングレリン濃度が上昇し、食欲抑制ホルモンレプチンが著しく減少した。さらに、血中ACTH、a-MSH濃度も上昇した。通常なら、上昇したグレリンが視床下部弓状核においてNPY/AgRPニューロンを活性化させ、POMC/CART神経を抑制する。しかし疲労負荷中、POMCシグナル下流ACTHおよびa-MSHの血中濃度上昇が、上昇したグレリンの視床下部POMC神経抑制作用ができていない状態に示し、制御機能異常の可能性を示唆した。さらに、レプチン低下した慢性疲労動物にリコンビナントレプチンの補充を行い、自発行動量が有意に回復した。レプチンが脳血液関門を自由に通過できることから、その補充による疲労回復の改善が、食欲中枢制御の変調を是正し、末梢からの介入でも慢性疲労を予防できる可能性が示唆された。テトメトリーシステムを用いた自立神経機能の測定を行った。モデル作成1週間前にテレメーターを頚背部皮下に埋入し、心拍数・深部体温・活動量を測定し、心拍変動解析を用いて、交感神経と副交感神経の両方の活動を反映するLFパワー、副交感神経の活動を反映するHFパワーおよび自律神経バランス指標(LF/HF比)の慢性疲労時の経時的変化を検討した。疲労負荷につれLFとHFの拮抗リズム消失やHFの低下が認められ、疲労の慢性化形成に自律神経バランスの失調が関与する可能性が示唆された。
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