研究課題
本研究では、高齢者が実践しやすい短時間、低強度の運動効果に着目し、高齢者のワーキングメモリ (WM)を高める運動条件とその脳内機構に関して、一過性や習慣的な運動効果を近赤外光脳機能イメージング装置(fNIRS)を用いて検証した。昨年度までの研究では、一過性の運動効果を予備的に検証し、健常高齢者 (n = 6)に対して10分の中強度有酸素運動がWM課題成績や課題中の前頭前野の活動を一過的に高める可能性を明らかにした。その後、COVID-19の流行に伴い、オンラインを活用した自宅での3ヶ月間の軽運動教室がWMに与える効果を検討する実験計画に変更した。まず高齢者が自宅で行うオンライン運動教室の実行可能性を確認したのち効果検証のRCTを行った。当該年度は、昨年度に実施したRCTの参加人数が予定より少なかったことから、2回目のRCTを実施した。36名の高齢者を運動群17名、対照群16名に無作為に割り付け、運動群は3ヶ月間自宅でオンライン運動教室(週5日、毎日20分の軽体操)を実施し、その前後にWMの指標となるN-back課題を実施し、脳活動をfNIRSで測定した。対照群は3ヶ月間通常の活動を行った。2回のRCTを合わせて解析した結果、N-back課題成績の介入前後の変化量は、群間で差は見られなかった。しかし前頭前野の脳活動はいくつかの測定部位で、運動群は対照群に比べて活動が低下していた。期間全体の研究成果をまとめると、一過性の短時間有酸素運動は高齢者のWMを高め、その背景には前頭前野の活性化が関連する可能性が示唆された。しかし、人数が少ないことから、より多くのサンプルサイズでの検討が望まれる。また、3ヶ月間の短時間の軽体操実践は、WMの課題成績には影響を与えないが、脳を効率的に使い課題を遂行できるようになる可能性がある。運動期間を延ばすことで課題成績にも好影響が出る可能性があることから、今後の研究が求められる。
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JMIR Aging
巻: 6 ページ: e39898~e39898
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