禁煙後数年間は体重増加が認められ、耐糖能悪化や禁煙失敗の原因となる。禁煙後、禁煙による利益と体重増加に伴う不利益が複雑に絡み合い経過する。我々は、初診時のFTND score(ニコチン依存度)が高い喫煙者は禁煙後に体重増加を来しやすいこと(Komiyama M. et.al. PLoS One 2013; 8: e72010)、動脈硬化促進作用を有する酸化LDL:α1アンチトリプシン-LDL複合体血中濃度の禁煙後減少(改善)は禁煙後体重増加が多い群では認められないこと(Komiyama M. et.al. Heart Vessels. 2015;30(6):734-9)、さらに抗動脈硬化作用を有するアディポネクチン血中濃度の上昇(改善)が禁煙後体重増加により阻害されること(Komiyama M. et.al. PLoS One. 2018;13(8):e0201244)を報告した。これらは、禁煙後の体重増加が心血管リスク抑制効果を阻害する可能性を示唆し、禁煙後体重増加の予防により心血管リスクの更なる軽減が期待される。 栄養指導は管理栄養士と共に食生活見直しを考える場であり、医療経済効果も高い。女性に対する栄養指導は、禁煙後肥満抑制や禁煙継続率向上に有用という報告はあるが、前向き比較試験はない。そこで本研究では、国立病院機構禁煙外来で禁煙後体重増加を来した患者を対象に、禁煙後の体重、糖・脂質代謝、心血管リスクマーカーおよび禁煙継続率に対する栄養指導の効果を多施設共同前向き無作為化群間並行比較試験研究にて検証する。主要評価項目は、禁煙による利益と体重増加による不利益を反映するアディポネクチンの血中濃度とした。本研究により、禁煙後体重増加および糖・脂質代謝マーカー悪化の予防を含めて包括的に心血管リスクを管理する、より質の高い禁煙治療指導要領の確立を行う。
|