研究課題
家族性高コレステロール血症(FH)は、LDL-コレステロール(LDL-C)高値持続により冠動脈疾患(CAD)ハイリスクとなる高頻度な(250-300人に1人)遺伝性疾患であり、CAD予防のためには早期診断と早期治療が望ましい。学生健診でも同頻度と考えられるが、20歳前後の若年成人における診断基準は確立されておらず、低診断が問題となっている。その克服には若年成人でのLDL-Cの健診スクリーニングが有用と考えられるが、その有効性はこれまで検証されていない。本研究では、若年成人(特に大学生)でのFH早期診断のための効果的な方策を明らかにするため、健診由来の18-30歳の高LDL-C血症患者(LDL-C≧160mg/dl)を対象に、以下の検討を行う。若年成人での1)健診高LDL-C血症におけるFH(FH原因遺伝子(LDLR、PCSK9)変異陽性)の頻度を明らかにする。2) FHの臨床的特徴を明らかにする。3)現在の診断基準の感度を明らかにする。4)新たな健診スクリーニング基準を提案する。現時点では、対象者のうち、1)約36%にFH原因遺伝子変異を認めた。2)FH変異陽性率は非肥満でさらに高かった。FH遺伝子変異陰性群では生活指導によりLDL-C値が改善する傾向がある一方で、FH遺伝子変異陽性群ではLDL-C値が持続高値となることが多かった。3)現在の国内外(日本動脈硬化学会、Dutch Lipid Clinic Network Criteria)の診断基準でのFH遺伝子変異陽性群の診断感度はいずれも30%未満と低かった。今後は、さらに症例数を増やし、これらの知見を検証、確立、若年成人FH早期診断のための新たな健診スクリーニング基準を提案、若年成人におけるLDL-Cの健診スクリーニングの意義を明らかにし、FHの早期診断からのCAD予防のための効果的な方策を提案していきたい。
2: おおむね順調に進展している
学生の生涯にわたる健康な生活と生産的な活動を支援するのは大学の責務であり、本研究は、若年成人におけるLDL-Cの健診スクリーニングの意義を明らかにし、FHの早期診断からのCAD予防のための効果的な方策を提案することを目的としている。具体的には、健診由来の若年成人高LDL-C血症におけるFH(FH原因遺伝子(LDLR、PCSK9)変異陽性)の頻度を明らかにする。2)若年成人FHの臨床的特徴を明らかにする。3)若年成人FHの現在の診断基準に基づく診断感度を明らかにする。4)以上のことを踏まえて、CAD予防のために有効な FHの新たな健診スクリーニング基準を提案することを目的としている。これまでの症例にこの1年間にリクルートした症例を追加し、98症例について、遺伝子解析(FH原因遺伝子(LDLR、PCSK9)の全蛋白翻訳領域のサンガーシークエンスなど)、臨床情報の収集、およびこれらを元にした統計解析を完了し上記結果を得て、国内外の学会において学会報告した。当初の計画通り、今後はさらに症例を追加してこれらの知見を確立していく予定である。以上から、本研究課題はおおむね順調に進展していると考えられる。
これまでの検討から、健診由来の18-30歳の高LDL-C血症患者(LDL-C≧160mg/dl)を対象として、1)若年成人での高LDL-C血症におけるFH(FH原因遺伝子(LDLR、PCSK9)変異陽性)の頻度は約36%と高頻度であること、2)特に肥満がない場合には、FH遺伝子変異陽性率がさらに高いこと(約41%)が分かった。これらの結果から、FHの早期診断・早期治療のために、若年成人における健診でのLDL-C測定が有用であることが示唆される。さらに、3)現在の国内外(日本動脈硬化学会、Dutch Lipid Clinic Network Criteria)の診断基準では、若年成人のFH遺伝子変異陽性群の診断感度はいずれも約30%未満であり、現在の診断基準は若年成人においては低感度で、その適用は低診断につながる可能性が示唆された。また、若年成人高LDL-C血症の臨床的特徴として、FH遺伝子変異陰性群では生活指導によりLDL-C値の改善が多い一方で、FH遺伝子変異陽性群ではLDL-C値の持続高値が多いことも分かってきた。本研究課題は、1)若年成人での健診高LDL-C血症におけるFH(FH原因遺伝子(LDLR、PCSK9)変異陽性)の頻度を明らかにする、2)若年成人FHの臨床的特徴を明らかにする、3)若年成人FHの現在の診断基準に基づく診断感度を明らかにする、4) 3)の感度が低い場合は、若年成人FHの新たな健診スクリーニング基準を提案することを目的としている。若年成人高LDL-C血症におけるFHの頻度、若年成人における健診でのLDL-C測定の意義を確立するためには、今後さらに症例数を増やし、これらの知見を検証、確立するとともに、CAD予防のための若年成人FH早期診断における最適な健診スクリーニング基準を検討する必要があり、これらについて当初の予定通り継続して進める。
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