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2019 年度 実施状況報告書

摂食障害に着目したエピジェネティクス制御とGPCRの相関関係

研究課題

研究課題/領域番号 19K20143
研究機関岐阜大学

研究代表者

濱本 明恵  岐阜大学, 工学部, 助教 (60784197)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2021-03-31
キーワードGタンパク質共役型受容体 / メラニン凝集ホルモン / 摂食 / ヒストン脱アセチル化酵素 / エピジェネティクス
研究実績の概要

最近、エピジェネティクスと摂食障害の関係が注目されている。エピジェネティクスとはDNA塩基配列の変化を伴わない、後天的な遺伝子の修飾機構(DNAメチル化、ヒストンアセチル化など)のことである。特にヒストンがアセチル化された領域ではDNAの巻き付きが緩むために転写が亢進されるが、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)により脱アセチル化されると転写が抑制される。これまで一部のGタンパク質共役型受容体(GPCR)とHDACが相互作用すると報告されているが、摂食関連GPCRとHDACの関係については全く不明であった。そこで本研究では摂食亢進GPCRとしてメラニン凝集ホルモン受容体(MCHR1)に着目し、HDACとの相関関係を網羅的に解析した。
まず、阻害剤であるトリコスタチンA処理によりMCHR1を介した細胞内シグナル系やMCHR1のタンパク質発現量が変化したことからMCHR1がHDACと相関関係を有していることを見出した。次に、HDACクラスⅠとⅡ(HDAC1~10)の内、どのHDACサブタイプが特に重要な役割を担っているかを検討した。その結果、細胞内シグナル系の解析(レポーターアッセイ)、ウエスタンブロット法、細胞免疫染色、定量PCR法などから、特にHDAC5、9、10がMCHR1との相関関係に重要であることが判明した。一方、細胞内シグナルの上流ではHDAC阻害剤処理やHDACを強制発現しても差が見られなかった。従って、HDACはMCHR1を介した細胞内シグナル経路内の下流で関与しており、長期的にMCH-MCHR1系を制御している可能性が考えられる。今後さらに詳細な分子機構を解明することでHDACと摂食関連受容体との関係が解明され、摂食障害や肥満の新たな治療戦略となることが期待される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

従来予定していたHDACとMCHR1の相関関係の有無の解析と、それに関与するHDACサブタイプの特定を行うことが出来た。
具体的には、HDAC阻害剤であるトリコスタチンA(TSA)処理により、細胞内シグナルの下流であるNFAT転写活性やMCHR1受容体発現量が変化したことからMCHR1とHDACには相関関係があることが分かった。次に、HDACクラスⅠ、Ⅱの内、どのサブタイプが特に重要かを明らかにするため、各HDACとFlag-MCHR1を共発現させたところ、MCH添加によりHDAC3, 5, 9, 10のタンパク質発現量が増加した。また、Flag-MCHR1が安定発現したHEK293T細胞にHDAC3, 5, 9, 10を過剰発現させることで、MCH添加によるNFAT転写活性が亢進した。次に、MCH添加によるHDACとMCHR1の局在の変化を細胞免疫染色法で調べたところ、通常MCHR1はMCH添加により細胞膜上における発現が低下する(受容体インターナリゼーション)が、HDAC5, 9, 10を共発現させることでMCH添加による膜発現低下が抑制された。さらに、定量PCR法を行った結果、MCH刺激により内在性HDAC5, 9, 10のmRNA発現量が変化することを確認した。一方、細胞内シグナルの上流である細胞内カルシウムイオン流入やERK1/2リン酸化ではHDAC阻害剤処理やHDACを強制発現しても差が見られなかった。従って、HDACはMCHR1-Ca-NFATシグナル経路内の下流で関与しており、長期的にMCH-MCHR1系を制御している可能性が考えられる。

今後の研究の推進方策

今後はin vivoにおいて、摂食関連GPCRとHDACの相関を解析するために、マウスの脳室内または腹腔内に摂食関連GPCRのアゴニストやアンタゴニスト、HDAC阻害剤を投与する。その後、各GPCRやHDACの発現変化を調べる。また摂食行動や鬱をはじめとした表現型も評価する。また、脳室内または腹腔内へ、摂食関連GPCRのリガンドまたはHDAC阻害剤を投与する。対象は、野生型マウスおよびSIK3-KOマウスとし、エピジェネティクス制御をアセチル化抗体を用いたクロマチン免疫沈降法と次世代シーケンサーで解析する。さらに、HDACと直接相互作用するGPCRまたはGPCR調節タンパク質(Gタンパク質キナーゼ、RGSタンパク質など)を同定するために、マウス組織を用いてHDACの免疫沈降を行い、各HDACに結合するタンパク質をMS-MS解析により特定する。

<塩誘導性キナーゼSIK3KOマウスにおける摂食関連GPCRの活性制御>
SIK3-KOマウスは低体重、無食欲症様の表現型を示し、HDAC4の発現低下が報告されている。そこで、SIK3-KOマウスにおいて摂食関連GPCRやその他HDACの発現機能に変化が生じているかを調べ、無食欲症をレスキュー出来るかを検討する。
①SIK3-KOマウスにおいて、HDACの各発現や活性がどのように変化しているかを調べる。各組織のヒストンアセチル化活性を測定する。②SIK3-KOマウスにおける摂食関連GPCRの受容体発現量を調べる。③②で発現変化が認められたGPCRのアゴニストやアンタゴニストをSIK3-KOマウスに投与することで、摂食が亢進するかを解析する。
本研究により、摂食関連GPCRとHDACの相関関係が明らかになり、摂食行動および摂食障害における新規メカニズムが明らかになることが期待される。

  • 研究成果

    (21件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (16件)

  • [雑誌論文] High Content of 11αOH-Kaurenoic Acid in AdenostemmA. lavenia (L.) O. Kuntze Leaf Extract.2020

    • 著者名/発表者名
      Hamamoto A, Isogai R, Maeda M, Hayazaki M, Horiyama E, Takashima S, Koketsu M, Takemori H.
    • 雑誌名

      Foods

      巻: 9 ページ: 73

    • DOI

      10.3390/foods9010073.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Mouse Model of Metformin-Induced Diarrhea.2020

    • 著者名/発表者名
      Takemori H, Hamamoto A, Isogawa K, Ito M, Takagi M, Morino H, Miura T, Oshida K, Shibata T.
    • 雑誌名

      BMJ Open Diabetes Res Care.

      巻: 8 ページ: e000898

    • DOI

      10.1136/bmjdrc-2019-000898.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Selective signaling pathway via feeding-related ciliary GPCR, melanin-concentrating hormone receptor 1.2019

    • 著者名/発表者名
      Saito Y, Hamamoto A, Kobayashi Y.
    • 雑誌名

      Nihon Yakurigaku Zasshi.

      巻: 154 ページ: 179-185

    • DOI

      10.1254/fpj.154.179.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Azepine derivative T4FAT, a new copper chelator, inhibits tyrosinase.2019

    • 著者名/発表者名
      Okajima S, Hamamoto A, Asano M, Isogawa K, Ito H, Kato S, Hirata Y, Furuta K, Takemori H.
    • 雑誌名

      Biochem Biophys Res Commun.

      巻: 509 ページ: 209-215

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2018.12.105.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] New Deletions in the Hermansky-Pudlak Syndrome Type 5 Gene in a Japanese Patient.2019

    • 著者名/発表者名
      Kato S, Aoe T, Hamamoto A, Takemori H, Nishikubo T.
    • 雑誌名

      Reports

      巻: 2 ページ: 15

    • DOI

      10.3390/reports2020015

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] ゼブラフィッシュに対する白斑誘発性化合物の影響2020

    • 著者名/発表者名
      早﨑真純、秦野修、竹森洋、濱本明恵
    • 学会等名
      第84回日本生化学会中部支部例会
  • [学会発表] 11αOHカウレン酸における抗炎症作用機序の解析2020

    • 著者名/発表者名
      小林卓広、磯貝亮介、濱本明恵、竹森洋
    • 学会等名
      第84回日本生化学会中部支部例会
  • [学会発表] 11αOHカウレン酸の標的検索を目的とした修飾法の開発2020

    • 著者名/発表者名
      前田美和、鈴木麻由、濱本明恵、竹森洋
    • 学会等名
      第84回日本生化学会中部支部例会
  • [学会発表] ヌマダイコンに含まれる抗炎症成分11αOH カウレン酸と転写因子NFκB との関係の解析2020

    • 著者名/発表者名
      磯貝亮介、濱本明恵、竹森洋
    • 学会等名
      第84回日本生化学会中部支部例会
  • [学会発表] CLEM imagings of rhododendrol-induced vitiligo in Danio rerio and catalytic oxidation of Japanese cedar wood.2020

    • 著者名/発表者名
      61.Hatano O, Hayazaki M, Hamamoto A, Takemori H, Takaya H, Shano T, Isozaki K, Ohnishi K, Nakamura M
    • 学会等名
      ABiS Symposium: Forefront and Future of Electron Microscopic Imaging
  • [学会発表] 摂食亢進GPCR を介したヒストン脱アセチル化酵素の制御2020

    • 著者名/発表者名
      濱本明恵、青山瑠里子、竹森洋
    • 学会等名
      第84回日本生化学会中部支部例会
  • [学会発表] 新規DDS 開発のためのメラニン合成制御剤の探索2020

    • 著者名/発表者名
      渡邉実夢、中村優介、濱本明恵、古田享史、竹森洋
    • 学会等名
      第84回日本生化学会中部支部例会
  • [学会発表] 化合物HCOQによるメラニン合成抑制機構の解明2019

    • 著者名/発表者名
      加藤慎也、濱本明恵、竹森洋
    • 学会等名
      第83回日本生化学会中部支部例会
  • [学会発表] 11αOHカウレン酸誘導体のメラニン形成抑制及び抗炎症作用2019

    • 著者名/発表者名
      磯貝亮介、濱本明恵、竹森洋
    • 学会等名
      第83回日本生化学会中部支部例会
  • [学会発表] メトホルミン誘導性下痢のマウスモデルにおける木クレオソートの止瀉効果2019

    • 著者名/発表者名
      竹森洋、濱本明恵、五十川健太、伊藤雅文、高木優憲、森野博文、三浦孝典、押田恭一、柴田高
    • 学会等名
      第92回日本生化学会大会
  • [学会発表] ゼブラフィッシュを利用した白斑評価2019

    • 著者名/発表者名
      濱本明恵、島林沙樹、竹森洋
    • 学会等名
      第90回動物学会
  • [学会発表] ゼブラフィッシュにおける白斑化現象2019

    • 著者名/発表者名
      早崎真純、竹森洋、濱本明恵
    • 学会等名
      第42回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] 摂食関連GPCRとHDACの機能相関関係2019

    • 著者名/発表者名
      青山瑠里子、竹森洋、濱本明恵
    • 学会等名
      第42回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] 11αOHカウレン酸誘導体による一酸化窒素(NO)産出抑制作用2019

    • 著者名/発表者名
      小林 卓広、磯貝 亮介、濱本 明恵、竹森洋
    • 学会等名
      第42回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] 11αOHカウレン酸のメラニン合成酵素遺伝子発現抑制における構造活性相関2019

    • 著者名/発表者名
      前田美和、伊藤弘成、濱本明恵、竹森洋
    • 学会等名
      第42回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] 薬物輸送システム開発にためのホワイトメラノソームの作成2019

    • 著者名/発表者名
      渡邉実夢、中村優介、岡島沙也花、濱本明恵、古田享史、竹森洋
    • 学会等名
      第42回日本分子生物学会年会

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公開日: 2021-01-27  

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