現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来予定していたHDACとMCHR1の相関関係の有無の解析と、それに関与するHDACサブタイプの特定を行うことが出来た。 具体的には、HDAC阻害剤であるトリコスタチンA(TSA)処理により、細胞内シグナルの下流であるNFAT転写活性やMCHR1受容体発現量が変化したことからMCHR1とHDACには相関関係があることが分かった。次に、HDACクラスⅠ、Ⅱの内、どのサブタイプが特に重要かを明らかにするため、各HDACとFlag-MCHR1を共発現させたところ、MCH添加によりHDAC3, 5, 9, 10のタンパク質発現量が増加した。また、Flag-MCHR1が安定発現したHEK293T細胞にHDAC3, 5, 9, 10を過剰発現させることで、MCH添加によるNFAT転写活性が亢進した。次に、MCH添加によるHDACとMCHR1の局在の変化を細胞免疫染色法で調べたところ、通常MCHR1はMCH添加により細胞膜上における発現が低下する(受容体インターナリゼーション)が、HDAC5, 9, 10を共発現させることでMCH添加による膜発現低下が抑制された。さらに、定量PCR法を行った結果、MCH刺激により内在性HDAC5, 9, 10のmRNA発現量が変化することを確認した。一方、細胞内シグナルの上流である細胞内カルシウムイオン流入やERK1/2リン酸化ではHDAC阻害剤処理やHDACを強制発現しても差が見られなかった。従って、HDACはMCHR1-Ca-NFATシグナル経路内の下流で関与しており、長期的にMCH-MCHR1系を制御している可能性が考えられる。
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