研究課題/領域番号 |
19K20144
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
中山 寛子 三重大学, 地域イノベーション学研究科, 研究員 (20831085)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 抗肥満作用 / ゼブラフィッシュ / マウス / 機能性食品 |
研究実績の概要 |
Palmaria mollis (Pacific dulse)は、近年北米を中心に食品として注目を集めている海藻である。高い栄養価(高タンパク質・高ミネラル) を含み、その消費は年々増加している。私はオレゴン州立大学との共同でこの海藻に強力な抗肥満作用(内臓脂肪の減少・脂肪肝および脂質異常症の改善)を、肥満ゼブラフィッシュ・マウスを用いて発見した。本研究では、ゼブラフィッシュおよびマウス脂肪細胞系を用いて、このPalmaria mollisに含まれる抗肥満成分およびその作用メカニズムを明らかにすることを目的とする。 2019年度では主にPalmaria mollis 画分を用いたマウス前脂肪細胞(3T3-L1細胞)の分化アッセイとゼブラフィッシュスクリーニング試験を行った。ヘキサン、アセトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、ブタノール、水など様々な溶媒でPalmaria mollis抽出物を調製した。まず、マウス前脂肪細胞(3T3-L1細胞)の分化アッセイを行い、脂肪細胞を減少させる抽出物を選定した。その後肥満ゼブラフィッシュにも抽出物を投与し、主に内臓脂肪蓄積への影響を解析し、内臓脂肪蓄積をよく抑制する抽出物の同定を行ったところ、同じ抽出物が最も効果がみられた。内臓脂肪量評価は中性脂肪特異的蛍光色素ナイルレッド(Nishimura Y, et al., Front Pharmacol. 2015;6:19)を用いた。最も効果を認めた抽出物はアセトン抽出したものであった。その後、HPLCを用いてさらに10画分の画分調製を行い、再度肥満ゼブラフィッシュに投与し、内臓脂肪蓄積・血液生化学データへの影響を解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Palmaria mollis画分を用いたマウス前脂肪細胞(3T3-L1細胞)の分化アッセイとゼブラフィッシュスクリーニング試験を主に行った。ヘキサン、アセトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、ブタノール、水など様々な溶媒でPalmaria mollis抽出物を調製した。マウス脂肪細胞を用いて分化アッセイを行い、その後肥満ゼブラフィッシュに抽出物を投与し、主に内臓脂肪蓄積への影響を解析し、もっとも内臓脂肪蓄積をよく抑制する抽出物の同定を行った。効果を認めた抽出物は、10画分を目標としHPLCを用いてさらに画分調製を行った。その後、調製した画分を再度肥満ゼブラフィッシュに投与し、内臓脂肪蓄積・血液生化学データへの影響を解析することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度ではPalmaria mollis 抗肥満成分の同定および作用メカニズムの解明を行う。2019年度で決定した画分に含まれる成分を三重大学が所有するNMR(核磁気共鳴装置)を用いて同定する。必要があればLC/MS(液体クロマトグラフィー質量分析)も使用する。なおこれらの装置は学内の共同実験機器を用いる。同定した成分の抗肥満作用メカニズムを明らかにするため、まずはゼブラフィッシュの内臓脂肪における作用を解明する。網羅的遺伝子発現を中心に、Palmaria mollisに含まれる有効成分が、脂肪細胞分化・成熟や脂質代謝(合成・分解)・ミトコンドリア代謝などのパスウェイに与える影響を明らかにする。明らかにした抗肥満作用メカニズムが人を含み哺乳類動物でも存在するか確認するため、肥満マウスへの投与試験を行う。使うマウスは前回の論文(Nakayama H, et al. Nutrients 2018;10:1401)でも使用したNSY/HOS系 統を用いる。抗肥満作用を確認した後、その内臓脂肪・肝臓のtotal RNAを抽出し、ゼブラフィッシュ試験と同様の遺伝子発現解析を行う予定である。
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