研究課題/領域番号 |
19K20145
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
金 仁求 京都大学, 複合原子力科学研究所, 研究員 (90784265)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 加齢性疾患 / 白内障 / LC-MS/MS / 異性化(D-アミノ酸) / 蛋白質異常凝集 |
研究実績の概要 |
白内障は、水晶体中の蛋白質の構造に変化が生じ、秩序構造が乱れ、凝集が進み→異常凝集化→不溶化することに起因する加齢性疾患である 。本研究では異常凝集の原因の一つである水晶体中のAsp残基の異性化部位を明らかにし、その迅速分析の開発を行う。これらの成果をもとにして、年齢別水晶体の分析を行うことにより、D-アミノ酸が誘起する蛋白質異常凝集機構の解明を目指し、発症時期の予測、防御、治療への道 を探ることができる。また、アルツハイマー病やパーキンソン病などの加齢性疾患の原因蛋白質の分析にも応用でき、高齢化社会の医療費軽減 に貢献できると考えられる。 ヒト眼の水晶体は主成分であるα-,β-,γ-クリスタリン(Cry)間の相互作用によって形成された規則的な会合体によってレンズとしての機能を保持している。白内障はこれらCry間の相互作用が加齢に共に低下し凝集と不溶化が生じるこのによって発症すると考えられている。白内障のCry中では複数の翻訳後修飾が検出されており、これらが凝集のトリガーと考えられている 。しかし、どの翻訳後修飾がCryの異常凝集のキーであるか、あるいはこれら複数の翻訳後修飾が互いに関連して異常凝集を惹起するのかは不明であった。そこで、本研究ではこの課題を解決するために年齢の異なるヒトの水晶体一個を用いて、LC-MS/MSによりこれら総ての翻訳後修飾 の一斉迅速分析を行い、白内障発症要因の究明に迫る。本研究により老化による白内障発症時期の予測が可能になると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
クリスタリン中のアスパラギン酸残基の異性体分析はLC-MS/MSで行っているが、最低、1μgの蛋白質が必要である。しかし、試料によっては1μgよりも微量 で、分析できないものがあった。クリスタリン中のAsp酸残基の異性体分析をLC-MS/MSで行っているが、最低、1μgの蛋白質が必要である。そこで、問題を克服 するためにLC-MS/MS(ion Trap法)でなく、他のLC-MS/MSであるターゲットMRM(multiple reaction monitoring)分析を実施し、従来の1/10-1/50量の試料でも分析 可能な方法を検討した。そこで、次年度はこの方法で、多くの試料を分析し、論文投稿を行う。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度に達成されたAsp異性体の定量化と自動化を用いて、年齢別、白内障進行度の異なる資料を多数分析する。また、凝集体と可溶性画分の両方に含まれるCry中の翻訳後修飾を比較し、Cry会合体の翻訳後修飾と凝集、不溶化との関係を明らかにする。Aspの異性体は生体内異性化反応によって生じるので、その異性体速度から白内障発症時期の予測が可能となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
(次年度使用額が生じた理由) 本研究の主力機器である液体クロマト質量分析装置(LC-MS/MS)のカラム、消耗品を本年度予算で購入の予定であったが、いづれも高価であるため、本年度は古いものでも使用可能であったので、これを購入しなかった。 (使用計画) 今年度は、必要な時期に交換すべき消耗品を購入し、分析の向上を目指す。
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