研究実績の概要 |
白内障は、水晶体中の蛋白質の構造に変化が生じ、秩序構造が乱れ、凝集が進み→異常凝集化→不溶化することに起因する加齢性疾患である 。本研究では異常凝集の原因の一つである水晶体中のAsp残基の異性化部位を明らかにし、その迅速分析の開発を行う。これらの成果をもとにして、年齢別水晶体の分析を行うことにより、D-アミノ酸が誘起する蛋白質異常凝集機構の解明を目指し、発症時期の予測、防御、治療への道を探ることができる。また、アルツハイマー病やパーキンソン病などの加齢性疾患の原因蛋白質の分析にも応用でき、高齢化社会の医療費軽減 に貢献できると考えられる。ヒト眼の水晶体は主成分であるα-,β-,γ-クリスタリン(Cry)間の相互作用によって形成された規則的な会合体によってレンズとしての機能を保持している。白内障はこれらCry間の相互作用が加齢に共に低下し凝集と不溶化が生じるこのによって発症すると考えられている。白内障のCry中では複数の翻訳後修飾が検出されており、これらが凝集のトリガーと考えられている。しかし、どの翻訳後修飾がCryの異常凝集のキーであるか、あるいはこれら複数の翻訳後修飾が互いに関連して異常凝集を惹起するのかは不明であった。そこで、本研究ではこの課題を解決するために年齢の異なるヒトの水晶体一個を用いて、LC-MS/MSによりこれら総ての翻訳後修飾 の一斉迅速分析を行い、白内障発症要因の究明に迫る。本研究により老化による白内障発症時期の予測が可能になると考えられる。
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