研究課題/領域番号 |
19K20148
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研究機関 | 広島国際大学 |
研究代表者 |
齋藤 瑛介 広島国際大学, 健康科学部, 講師 (60760080)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 糞便中胆汁酸濃度 / 腸内細菌叢 / 排便頻度 / 不溶性食物繊維 / 動物性脂質 / 二次胆汁酸 / 一次胆汁酸 |
研究実績の概要 |
腸管内に分泌された一次胆汁酸は、腸内細菌によって様々な二次胆汁酸に変換される。この代謝は大腸癌や胆石症、代謝栄養疾患のリスクや治療に関連することが近年注目されている。食事や排便状況は、胆汁酸や腸内細菌叢に影響を与える修正可能な要因である。したがって、二次胆汁酸の産生を減少させる習慣的な生活習慣要因を解明することは、大腸がん、胆石症、肝臓がんの減少をもたらす可能性がある。動物およびヒトモデルを用いた先行研究では、プロバイオティクス、食事、大腸通過時間、腸内細菌組成が腸内胆汁酸代謝に影響を与えることが示されているが、これらすべての要因を含む研究はほとんどない。さらに、動物モデルを用いた胆汁酸研究には大きな限界がある。実際、胆汁酸のプロファイルと代謝はヒトと動物で異なる。従って、ヒトに関する研究がより適切である。本研究目的は、この代謝に影響を及ぼす生活性因子を探求することである。2020年度までに、本研究のヒト試験および糞便サンプルの分析を完了し、被検者70人分のデータセットが得られた。 2021年度は、得られたデータセットを統計解析することにより、糞便中胆汁酸組成に及ぼす排便状況、腸内細菌叢および習慣的な食事に関する因子を探求した。被験者は、クラスター分析により、糞便中の胆汁酸組成に基づいて4つのクラスターに分類され、クラスター間で排便状況、習慣的な食事状況、腸内細菌叢を比較した。糞便中の一次胆汁酸レベルが高いクラスターメンバーは、他のクラスターとは明らかに異なる腸内細菌叢パターンを示した。一方で糞便中二次胆汁酸が高いクラスターメンバーは、高い動物性脂質摂取、低い不溶性食物繊維摂取、低い排便頻度を有していた。これら結果は、二次胆汁酸の産生は、習慣的な食事と生活習慣によってコントロールできる可能性があり、大腸癌や胆石症発症を予防できる戦略であることを示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究のヒト試験は、当初予定していた2020年度までに完了することができた。本研究の対象者は、当初予定していた70名を集めることができ、希望者全員が本研究スケジュールを完了し、最終的に70名の利用可能なデータセットを集めることができた。研究3年目は、データを解析し、結果を公表することを予定しており、2021年度おおむね達成することができた。現在論文投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年度である2022年度は、追加の論文執筆、学会発表、本研究に続く研究のデザインを予定している。本研究対象者は主に若年女性であった。糞便中の胆汁酸、腸内細菌叢は年齢や性別間で違いがあるのか、興味深い課題である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021度の学会発表を見送ったため、旅費として使用する予定だったものが残金として生じた。2022年度は、学会発表を予定しており、すでにエントリー済である。2022年度の予定額は、論文掲載費と追加の論文校正費に使用する予定である。
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