本研究は、健常者を対象とした食品負荷試験により、生体試料中で特異的に変動する代謝物の経時的な変動について検討し、客観的な食習慣の評価方法の確立を目指すものである。対象は、健康成人男性8名(年齢:23.9±1.1歳、BMI:21.1±2.6kg/m2)であり、無作為クロスオーバーにて18食品および4飲料を単回摂取した。血漿は食前および食後2時間後、尿は食前及び食後2、4時間後に採取し、CE-TOFMSによるメタボローム解析を行った。 2021年度は食品負荷試験から得た代謝物のデータや公開されている食品の栄養組成などのデータを用いて、食品ごとの代謝物や栄養組成に特徴がないか比較検討を行った。食品の栄養価についての階層的クラスタリングおよびヒートマップにより、肉類と魚類の違いを示す栄養価はアミノ酸よりも脂肪酸の方が有用であることが示唆された。 研究期間全体の成果としては、肉類(牛肉、豚肉、鶏肉)および魚類(サバ、サケ)の摂取による代謝物の変動を比較した結果が特徴的であった。OPLS判別分析により、肉および魚摂取によって血漿および尿中代謝物のいずれも代謝物プロファイルの分離に寄与する物質が存在し、肉および魚摂取で反応性の異なる代謝物があることが考えられた。分離に寄与した代謝物について、食前と食後の濃度差や、摂取した食品間の差をみると、数種類の代謝物は血漿および尿中代謝物のそれぞれで、肉または魚摂取により食後に有意に上昇し、摂取した食品間で濃度に有意差が見られた。また、ROC曲線により、カルノシンやTMAOなどの数種類の代謝物は高性度の予測能を示したため、血漿や尿中代謝物によって肉または魚摂取の評価が可能であることが示唆された。
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