研究課題/領域番号 |
19K20156
|
研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
池田 拓郎 国際医療福祉大学, 福岡保健医療学部, 講師 (20611792)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 視覚誘発電位 / 立体運動視 / ランダムドットステレオグラム / 平衡機能 / 姿勢制御 |
研究実績の概要 |
加齢による視空間認知機能の低下は、主に頭頂葉や視覚関連領域の機能低下で起こるとされる。一方で、これらの領域と高次運動関連領域との神経機能結合および加齢による全脳レベルでの脳内神経ネットワークの変化についての検討はなされていない。また、近年では頭頂葉が立位姿勢調節時の脳内視空間情報処理に関与することがわかってきたが、視覚系単独が立位姿勢調節時の平衡機能にどの程度関与するのかを脳内神経ネットワークレベルで検討した報告はあまりない。まず2019年度は、運動立体視の脳内神経活動に焦点を絞り、視覚誘発電位の特徴を検討することによって健常成人の基盤を明らかにすることとした。対象は健常成人女性10名。視覚刺激は、ランダムドットステレオグラムを用い、両眼視差を一様につけたRDS(C-RDS)と放射状の視差勾配をつけたRG-RDSとした。対象者の目前57cmのモニター上にRDSを刺激呈示時間0.75s、刺激間隔1.5~3.0sで呈示した。両眼視差はC-RDSを0.5°とし、RG-RDSを0~0.5°とした。その結果、RG-RDSとC-RDSとでは、視覚刺激後170msと240msに陰性成分(N170、N240)を記録でき、C-RDSはRG-RDSより潜時が遅延した。RG-RDSでのみ330msに陰性成分(N330)を記録できた各陰性成分は、後頭部、頭頂部および後頭部に分布していた。本結果より、潜時の違いは視差勾配の立体形状を示唆するものと推察する。また、RG-RDSのN330の陰性成分はより立体運動視に関連する反応の可能性がある。2020年度は、被検者数を増やすことと、RG-RDSのN330を指標に重心動揺との関連を検討する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス(COVID-19)の影響を受けて当初の被検者数を担保できなかったが、おおむね脳活動の特徴を確認することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス(COVID-19)による緊急事態制限解除および所属機関の館内立ち入り制限の解除の後、感染対策に留意しながら速やかに実験を再開する。必要に応じて、対策用の除菌剤等を購入する。健常成人の脳活動のデータベースの構築を目指し、被検者数を増やすことに務める。また、脳活動とバランス能力との相関を検討するために中断していた平衡機能検査を可及的に進めていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該助成金が生じた状況として、1)機器を安価に購入できたこと、2)当初の予算執行計画を機器の故障によって見直すことになってしまったこと、3)新型コロナウイルスにより、予定していた被検者数を下回ることになってしまったこと(謝金)、以上3点が理由である。 翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画として、1)計測パラメーターを拡充させるためのシステム構築、2)謝金、3)学会参加及び交通費(成果報告)、4)論文校閲及び投稿費に使用する予定である。
|