研究課題/領域番号 |
19K20162
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
水上 健一 中部大学, 生命健康科学部, 講師 (00736093)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | レジスタンストレーニング / 認知機能 / 脳由来神経栄養因子 / インスリン様成長因子 / フレイル / サルコペニア / 認知症 / アミノ酸摂取 |
研究実績の概要 |
健康日本21 (第二次) では認知症予防の重要性が明記され、後期高齢者は従来のメタボリックシンドローム対策からフレイル対応 (サルコペニアや認知症の予防,食生活の改善といった包括的な対策) への円滑な移行が必要である。有酸素性運動は認知症予防となることが確定的であるがサルコペニア予防に対して有効であるとは言い難く,一方でレジスタンストレーニングはサルコペニア予防に有効であるが認知機能への効果はコンセンサスが得られていない.本年度は,1) 新型コロナウイルス感染症拡大により見送らざるを得なかった対照群の各測定を実施し,2) レジスタンストレーニングおよびアミノ酸摂取の併用が認知機能に及ぼす影響を検討する予定であった. 1) については無事実施することができた.その結果,12週間のレジスタンストレーニングの実施は対照群と比較して,ストループテストに観る情報処理速度および逆ストループ干渉率を有意に上昇させるとともに,血清脳由来神経栄養因子 (BDNF) 濃度を有意に上昇させた.併せて,複数の日常生活動作 (ADL) 関連体力も向上させた. 2) については,新型コロナウイルス感染症拡大の影響により,12週間の継続的な介入を遂行できる目処が全く立たず,本年度実施予定であったアミノ酸摂取の有無による無作為化比較試験を中止せざるを得なかった. レジスタンストレーニングは単に運動器機能改善・向上を介したサルコペニア予防に効果的であるだけにとどまらず,認知機能の改善・向上すなわち認知症予防にも効果的であることが示され,このことはレジスタンストレーニングが複合的なフレイル予防戦略として有効である可能性を示唆する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により,12週間の継続的な介入を遂行できる目処が全く立たず,本年度実施予定であったアミノ酸摂取の有無による無作為化比較試験を中止せざるを得なかった.2021年度に実施できるよう調整中であるが,感染状況が上向きになっていないため未だ実施の目処が立っていない状況である.
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今後の研究の推進方策 |
レジスタンストレーニング単独でもフレイル予防に対して有効である結果が得られたことから,アミノ酸摂取の有無による検討を行うことで相乗効果が検出可能であることが期待できる.しかしながら,レジスタンストレーニングの効果測定のためには12週程度の中期的な介入期間が必要であり,新型コロナウイルス感染症の収束の気配がなく感染状況によって研究の中断を余儀なくされる状況にあっては,中期的な介入の遂行が難しい. 本研究の最大の目的は,複合的なフレイル予防に対する有効的な運動様式・強度を見いだすことである.中期的な介入が困難である以上は,レジスタンストレーニングと同様に運動器機能改善に効果的な一過性の運動介入を行った際の認知機能評価,ならびにアミノ酸摂取との併用効果の検証に切り替える必要があるかもしれない. 例えば,一過性の血流制限下運動は運動器機能向上に対して効果的であることが示されているが,その際の認知機能を評価した報告は私が知りうる限り一報しかない.血流制限下運動におけるマイオカインの増加は,中枢機能に対して有益である可能性は十分に考えられ,血流制限下運動もレジスタンストレーニングと同様に複合的なフレイル予防戦略として有用かもしれない. 今後の新型コロナウイルス感染症の状況次第では,介入する運動様式をレジスタンストレーニングから血流制限下運動に切り替えて検討を進め,またアミノ酸摂取との併用効果も検討していくこととする.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により,レジスタンストレーニングとアミノ酸摂取との併用効果の検証を延期したため,消耗品費を繰り越すこととなった.人件費・謝金は他の研究費により弁償可能であったため,その分も繰り越すこととなった. 繰り越した分は延期した実験,もしくは介入する運動様式の変更が必要な場合にはその測定へ充てることとする.
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