健康日本21 (第二次) では認知症予防の重要性が明記され、後期高齢者は従来のメタボリックシンドローム対策からフレイル対応 (サルコペニアや認知症の予防,食生活の改善といった包括的な対策) への円滑な移行が必要である。有酸素性運動は認知症予防となることが確定的であるがサルコペニア予防に対して有効であるとは言い難く,一方でレジスタンストレーニングはサルコペニア予防に有効であるが認知機能を改善・向上させるかについてはコンセンサスが得られていない. 当初の予定が大幅にずれ込み,中期的な介入研究の遂行が難しい状況にあった.他方,本研究の最大の目的は,包括的なフレイル予防に対する有効的な運動様式・強度を見いだすことであることから,中期的な介入が困難である以上は,一過性の運動介入による認知機能評価の検証に切り替える必要があった. 最新のシステマティックレビューとメタアナリシスによると,レジスタンス運動が認知機能に及ぼす効果を確定させるためには,FITT-VP (頻度: frequency,強度: intensity,時間: time,種類: type,漸増/改訂: progression/revision) を踏まえた更なるエビデンスの蓄積が必要であることが示されている.そこで,中頻度 (10回 x 3セット),中強度 (70% 1-RM),中等度の時間 (セット間30秒,種目間60秒),3種目 (スクワット,ベンチプレス,ベントオーバーロー) のプロトコルを設定した.その結果,一過性のレジスタンス運動は有酸素性運動と同様に認知機能 (実行機能) を向上させることが示され,脳由来神経栄養因子の増加も認められた.今後は負荷設定を含めて更なる検討が必要であるものの,レジスタンス運動が包括的なフレイル予防戦略として有効であるとする先行研究を支持する結果であった.
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