研究課題/領域番号 |
19K20164
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研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
長太 のどか 鈴鹿医療科学大学, 保健衛生学部, 助教 (10772593)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 敗血症 / 免疫麻痺 / 樹状細胞 / 腸管粘膜 / 脾臓 |
研究実績の概要 |
敗血症は感染症を発端に発症し、炎症が全身に広がり、多臓器不全、血圧低下、ショックなどの症状を引き起こす重篤な全身疾患であり、敗血症後期には免疫系が強く抑制された免疫麻痺により引き起こされる二次感染が懸念されているが、この免疫麻痺のメカニズムは未だ不明な点が多く、詳細な分子機構は解明されていない。敗血症では、腸管細菌叢の乱れが樹状細胞(DC; Dendritic Cell)を含む粘膜免疫細胞の機能不全を誘導している可能性が提唱されているため、我々は、正常に活性化された免疫系の誘導と維持が重要であると考え、免疫系活性化誘導に大きく関与することが期待できる腸管粘膜DCと、その機能に影響する可能性があるプロバイオティクスに着目した。マイクロRNA miR-221/222は、DCの活性化に関与する遺伝子群を包括的に制御し敗血症の免疫麻痺において中心的役割を果たす。我々は、プロバイオティクスが敗血症で誘導される腸管粘膜DCのmiR-221/222発現上昇を抑制し、免疫麻痺を解除する仮説を検証している。 2019年度は、敗血症における腸管粘膜(MLN)、二次感染頻発部位である肺、全身性免疫を代表する脾臓(SP)におけるDCの遺伝子発現解析を試みるにあたり、盲腸結紮穿刺(CLP)敗血症モデルマウスを作製し、MLN組織とSP組織それぞれにおけるDCの機能的違いについて検証した。MLNのDCは、より多くのIL-1βを産生し、CD4T細胞をより効果的に増殖させることを示したことから、DCは部位によって性質が異なることが考えられ、それによって免疫麻痺を誘発する可能性が見出された(S.Darkwah, N.Nago et al, Biomedicines, 2019)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
敗血症モデルマウスにおける腸管粘膜(MLN)、肺、脾臓(SP)におけるDCの遺伝子発現解析を試みるため、まず初めにMLN組織とSP組織におけるDCの機能的違いについて検証し、確認することとした。MLNのDCおよびSPのDCが敗血症モデルマウスのT細胞を活性化する能力を調べた結果、敗血症モデルマウスのMLNから回収したCD11c+細胞がSPよりもCD4T細胞を増殖させることを明らかにし、MLNのDCがT 細胞免疫反応の活性化に関与していることを証明した。さらに、CD11c+細胞の表面マーカーおよびサイトカインレベルを調べ、IL-1βmRNAおよびMHCクラスⅡの発現が著しく増強したことを認めたことから、CD11c+細胞がMLNのDCをリモデリングさせてT細胞免疫反応が活性化されたことを示した。以上のことから、2019年度はDC機能の分子的基盤を示した(S.Darkwah, N.Nago et al, Biomedicines, 2019)。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、当初の研究計画通り、MLN、肺、SPのDCにおける遺伝子発現解析やプロバイオティックアプローチによる敗血症腸管粘膜DCへの影響について進めていく予定であるが、さらなる学術的意義のある内容に応じて本研究計画内容に一部追加や修正を加え、また新たな研究分野にも視野を広げ挑戦しながら課題を達成し、より発展させていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に必要な器具・物品等が予定より安く入手できたため、購入費用に若干の余裕ができ、次年度使用額が生じた。 これらは2020年度助成金と合わせて、実験用動物や試薬、消耗品等の購入に使用する計画である。
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