敗血症は感染症がきっかけとなって誘発される全身性炎症性反応症候群である。本症では、腸管細菌叢の乱れが樹状細胞(DC)を含む粘膜免疫細胞の機能不全を誘導している可能性が提唱されているため、我々は正常に活性化された免疫系の誘導と維持が重要であると考え、免疫系活性化誘導に関与することが期待できる腸管粘膜DCとその機能に影響する可能性があるプロバイオティクスに着目し、プロバイオティクスが敗血症で誘導される腸管粘膜DCのmiR-221/222発現上昇を抑制して免疫麻痺を解除するという仮説の検証を試みた。2019年度は、敗血症における腸管粘膜(MLN)および全身性免疫を代表する脾臓(SP)におけるDCの遺伝子発現解析を試みるにあたり、盲腸結紮穿刺(CLP)敗血症モデルマウスを作製し、MLN組織とSP組織それぞれにおけるDCの機能について検証した。MLNのDCは、より多くのIL-1βを産生しCD4T細胞を効果的に増殖させることを示したことから、DCは部位によって性質が異なることが考えられ、それによって敗血症性二次感染の原因となる免疫麻痺を誘発する可能性が見出された。2020年度は、敗血症発症の原因となり得る腸管感染症に対するプロバイオティクスの効果について確認しておくべく、主要な感染源であるサルモネラ菌の増殖抑制効果を調べた。我々は、プロバイオティクスを全面塗抹および縄張りを作製したMRS培地上においてサルモネラ菌の増殖が抑えられたことを確認した。また、同時にサルモネラ菌を全面塗抹したMRS培地においてプロバイオティクスの増殖傾向が認められたことから、敗血症を誘引する契機の1つとなる腸管感染症に対して有効である可能性が示唆された。
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