研究課題/領域番号 |
19K20165
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研究機関 | 京都光華女子大学 |
研究代表者 |
中木 直子 京都光華女子大学, 健康科学部, 助教 (40804183)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | エストロゲン / グレリン / 高脂肪食 / 肥満 / 卵巣摘出ラット / 閉経モデルラット |
研究実績の概要 |
本研究では、卵巣摘出による閉経モデルラットを作成し、女性ホルモンであるエストロゲンを補充することで、高脂肪食誘発性肥満に与える影響を検討した。また、そのメカニズムを明らかにすべく、摂食亢進ペプチドのグレリンに着目し検討を加えた。 (1)卵巣摘出手術の4週間後にエストラジオール補充を行ったE2群と偽薬を補充したプラセボ (Pla) 群の2群に分け、同時に高脂肪食(HFD)の投与を開始した。HFDによりPla群ではエネルギー摂取量と体重が増加したが、E2群では減少した。HFD投与の4週間後には、E2群のエネルギー摂取量はPla群と同レベルにまで回復したが、体重および腹部内臓・鼡径部皮下脂肪重量には両群間に差が認められた。つまり、E2補充はHFD飼育下においてもエネルギー摂取量を調節し、抗肥満作用を発揮することが明らかになった。 (2)(1)のメカニズムを明らかにするため、主に胃内分泌細胞で産生されるグレリンの摂食促進作用に与えるE2の影響に着目し、検討した。グレリン受容体アゴニストであるGrowth hormone-releasing peptide-6の腹腔内投与は、Pla群のHFD摂取量を増加させ、摂食中枢である視床下部弓状核におけるc-Fos陽性ニューロンの数を増加させたが、E2群では影響を与えなかった。さらに、胃でのグレリンおよびグレリン受容体タンパク質レベルは、Pla群よりもE2群で有意に低かった。したがって、HFD飼育下の閉経モデルラットに対するE2補充は、胃のグレリンとその受容体を減少させることによって、グレリンの摂食促進作用を抑制し、HFD誘発性肥満を改善することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度に行った実験により、卵巣摘出ラットにおけるエストラジオール(E2)補充の高脂肪食誘発性肥満改善作用について、E2がエネルギー摂取量を調節することで、抗肥満作用を発揮することを明らかにすることができた。また、胃でのグレリンとグレリン受容体をWestern blot法を用いて測定したところ、E2群の方がPla群よりも有意に低い値を示した。このことから、エストロゲンが胃でのグレリン産生やグレリン受容体の発現に影響を与えることで、高脂肪食からのエネルギー摂取を調整し、肥満を予防している可能性を明らかにすることができた。 これまでにも、エストロゲンがグレリンの摂食促進作用を抑制したという報告はされていたものの、エストロゲンのグレリンに対する抑制部位とそのメカニズムを明らかにした報告はなかった。申請当初は、グレリンがもつ摂食亢進作用へのエストロゲンの作用部位の特定を2019・2020年度の2年間で行うことを想定していたが、本研究結果を2020年3月に査読付き学術雑誌で発表することができた。以上のことから「(2)おおむね順調に進展している」を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度の結果より、当初の計画はおおむね順調に進んでいるが、以下に示す新規のプロトコールを加え、グレリンを介したエストロゲンの高脂肪食誘発性肥満予防作用について更なる解析を進める予定である。 (1)エストロゲンにはインスリン抵抗性を改善させる効果があることが知られているが、その詳細は明らかになっていない。また、グレリンには摂食亢進作用だけでなく、インスリン分泌抑制作用もあることが知られている。このことから、エストロゲンの高脂肪食誘発性肥満改善作用について、糖質・脂質代謝へ与える影響についても着目し、検討を加えたい。まずは卵巣摘出ラットにエストラジオールを補充し、高脂肪食摂食下における耐糖能への影響を、糖負荷試験やインスリンシグナル伝達経路に関連するタンパク発現を分析することで明らかにしたいと考えている。 (2)おおむね順調に研究が進められていることを受けて、2021年度に実施を予定していた女性の月経周期に伴うエストロゲン濃度の変動がもたらす体重・食事量・食嗜好性の変化と血漿グレリン濃度の関連について、予備実験に着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時に予定していたよりも安価なマイクロプレートリーダーを購入することができ、物品費に余裕が生じたために次年度への繰り越しが可能となった。繰り越し分を次年度予算の物品費(試薬代など)やその他(英文校正費、論文投稿費)に繰り入れることにより、女性ホルモンのエストロゲンがもつ高脂肪食誘発性肥満改善作用とそのメカニズムの解明を目指す本研究課題の効果的な推進を計画している。
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