本研究はA病院にて浮腫が認められる脳卒中患者を対象に、足の背部(麻痺側と非麻痺側)の圧痕の深さ、皮膚の微小循環血流、および再灌流の血圧を評価項目として、安静時、足の筋収縮運動時、筋収縮運動1か月継続後を横断的に調査することであった。さらに、B病院にて浮腫が認められる脳卒中患者を対象に、足の筋収縮運動の実施群通常メニューを行う対照群の2群に分けて、同様の評価項目を縦断的に調査する研究であった。 研究計画では、2019年度は大学の研究倫理審査委員会の審査を受けて承認を得てから研究に着手することであった。2020年度は、2019年度に得られたデータを検証し、中間発表を行うことと、横断的研究に着手する予定であった。2021年度は、すべての収集データを解析し、浮腫発生の危険因子として、骨格筋収縮によるポンプ作用が影響していることを明らかにすることであった。 2019年度の研究業績は、A病院より収集した調査データを分析し、浮腫の圧痕の深度において、麻痺側と非麻痺側の違いを明らかにすることができた。2020年度の研究業績は、A病院より収集した調査データと健常者を対象として得られた調査データを用いて、浮腫の病態を識別する圧痕深度評価法のカットオフ値を明らかにすることができた。しかしながら、2021年度は新型コロナウィルスの感染拡大によって調査自粛を余儀なくされたため、2021年度はA病院での残りのデータ収集に留まり、B病院での調査データ収集は着手することができなかった。そのため、補助事業期間延長承認を得て、2022年度も調査研究を継続することになった。しかしながら、2022年度の研究業績は、B病院での調査データ収集に着手できないまま終わったため、健常者を対象として得られた調査データを基に、浮腫の要因である下肢末梢水分量と皮膚微小循環血流量との関連を検討し、相関しないことを明らかにした。
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