加齢に伴って発症する脂肪組織の慢性炎症におけるFABP5の役割を明らかにし、FABP5を標的とした慢性炎症の治療応用へと展開するための分子基盤を確立することを目指している。2022年度は、加齢育成させたFABP5ノックアウトマウス由来の脂肪組織におけるFABP5の機能解析、特に、NFκBシグナルの活性化におけるFABP5の役割を明らかにするための解析を行い、以下のような結果を得た。 1. 18ヶ月齢のFABP5ノックアウトマウスおよびコントロールマウス由来の脂肪組織からtotal RNAを抽出し、各種炎症性サイトカインの発現量を定量RCR法で解析した。その結果、FABP5ノックアウトマウス群ではコントロールマウス群と比較してIL-6、IL-18、TNF-αの発現量が低下していることがわかった。一方、これらの炎症性サイトカインの血清中濃度をELISA法で解析したところ、mRNA発現量と同様にFABP5ノックアウトマウス群で低下する傾向はあるものの、統計学的な有意差は見られなかった。 2. 脂肪組織におけるNFκBシグナルの活性化におけるFABP5の役割を明らかにするため、FABP5ノックアウトマウスおよびコントロールマウス由来の脂肪組織におけるNFκBシグナル関連分子の挙動を解析した。その結果、FABP5ノックアウトマウス群では、p65タンパク質の発現量、およびリン酸化レベルが有意に低下していることがわかった。 前年度までの結果と今年度得られた上記の結果より、脂肪組織においてFABP5はNFκBにより発現制御されるだけでなく、NFκBシグナルの活性化を介して加齢に伴う炎症性シグナルの活性化に関与していることが示唆された。
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