研究課題/領域番号 |
19K20176
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研究機関 | 流通経済大学 |
研究代表者 |
諏訪部 和也 流通経済大学, スポーツ健康科学部, 助教 (80816413)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 超低強度運動 / 身体活動量 / 認知機能 / 海馬 / 音楽 |
研究実績の概要 |
申請者はこれまで、健常若齢者を対象にした研究から、ヨガや太極拳などの軽運動を模した一過性の超低強度運動(最大酸素摂取量の37%以下)が記憶能を向上させること、その神経基盤として海馬の記憶システムが上方調節されることを高解像機能的MRIを駆使して明らかにした。本研究は、超低強度運動が高齢者の海馬記憶能に与える効果とその脳内メカニズム解明を目指す(プロジェクト1)。加えて、現場への実装を念頭に、軽運動の効果をより高めることを狙いとした、音楽に合わせた楽しい軽運動プログラムを開発する(プロジェクト2)。3年計画の2年目となる令和2年度は、コロナ禍により計画を変更し、以下の通り各プロジェクトを推進した。 プロジェクト1では、昨年度実施した視覚刺激の親密度調査の結果をもとに、これまで若齢者を対象とした研究で用いてきた記憶テストを高齢者用に改編した。当初の研究計画では、これを用いて海馬記憶能と有酸素能、身体活動量の関係性を健常高齢者100名程度を対象に横断的に検証する予定であったが、コロナ禍により計画通りの実施が困難であったため計画変更し、研究対象者数を縮小し、測定項目数も限定して実施した。その結果、海馬機能の指標とされる類似物体識別スコアは中高強度運動時間や安静時間とは関連しなかった一方、低強度運動時間とは有意な関係性が認められた。今回はあくまで横断的な調査であるため、低強度運動と海馬記憶能の因果関係は不明であるが、低強度運動が海馬記憶能にポジティブな効果を有することが示唆され、今後超低強度運動の効果を検討するための足がかりとなる知見を得ることができた。 プロジェクト2では、音楽に合わせた軽運動プログラムを思案した。昨年度得られた知見を元に、心理的な活性度を高めるように音楽や動作を工夫した。試作したプログラムはオンライン会議システムを活用して、遠隔にて試行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
プロジェクト1では、コロナ禍により大学の施設が使用できなかったこと、研究協力者の募集が難航したことから、計画通りに実験を実施することができなかった。しかしながら、計画を変更して実施した横断研究では、低強度運動が海馬記憶能にポジティブな効果を有することを支持する結果が得られ、超低強度運動の効果検証に関する実験を実施する意義が一層強まった。プロジェクト2は、ほぼ計画通りに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
プロジェクト1では、一過性の超低強度運動が高齢者の海馬機能に与える効果に関して、実験を実施する。感染症の状況によっては、今後も大学での実験実施が制限される可能性が考えられるため、感染症対策を十分に施した上で、大学外に出向いて実験ができるように準備を進める。実験再開が大幅に遅れる場合には、プロジェクト2の運動プログラム開発を充実させるなど、適切なタイミングで計画を変更し、最終目的達成に近づけるように努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は研究計画の研究協力者の数や測定項目を縮小して実施したため、研究協力者への謝金や実験消耗品費として計上してあったものが使用できなかった。次年度は、研究計画の遅れを取り戻すために、必要に応じて研究実施協力者(測定者やデータ分析)を雇用する。また、想定外の出費として、感染対策を十分に施すために、必要に応じて物品を購入する。
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