研究課題/領域番号 |
19K20179
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
吉永 絢 (桐明絢) 福島大学, 食農学類, 客員准教授 (20794845)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 多価不飽和脂肪酸 / 安定同位体 / ラベル化 / 合成 / 多価不飽和脂肪酸過酸化物 / 体内動態 / 可視化 |
研究実績の概要 |
多価不飽和脂肪酸(PUFA)の酸化によって生成される脂質酸化物は、食中毒の原因となるが、その毒性は、過酸化脂質(PUFA過酸化物)の分解により生成した二次酸化生成物が主な原因である。PUFA過酸化物は食品中に存在する二次酸化生成物の出発物質として理解されてきたが、その体内動態を精査した研究は存在しない。現在までに、PUFA過酸化物の摂取後の体内代謝に関しては、このアルコール化物への変換まではよく知られているが、①その後、過酸化物やアルコールが体内のどの臓器・組織に蓄積するのか、②もしくは再びPUFAの形に戻されて体内でPUFAとして臓器・組織に蓄積されるのか、③通常のPUFAと同じように体内で代謝(体燃焼)されるのか、などの知見は全く得られていない。そこで、本研究では、各種PUFA過酸化物の体内動態を視覚化することを研究の目的とした。 本年度は、安定同位体ラベル化PUFA過酸化物の合成をめざした。まず始めに、安定同位体ラベル化リノール酸を合成した。高純度品は非常に高価であるため、魚油、豚肝油、エゴマ油などから脂肪酸メチルエステルを合成し、分取LCで精製することで10 g単位の目的のPUFAメチルエステルを得た。得られたPUFAメチルエステルを用いて、重水素化を行い、加水分解によってアルコール化し、hunsdiecker反応による臭素化後、Grignard反応を用いて安定同位体(13C)でラベル化した。合成した安定同位体ラベル化リノール酸の純度は、ガスクロマトグラフィー-水素炎イオン化検出器(GC-FID)を用いて確認した。合成した安定同位体ラベル化リノール酸をさらに酸化し、安定同位体ラベル化PUFA過酸化物の合成を試みたが、大量に合成することができず、次の実験に必要な量を確保することができていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
安定同位体ラベル化PUFA過酸化物を入手するため、安定同位体ラベル化PUFAの酸化を試みた。様々な加熱酸化条件等を検討し、確認のため高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供した。しかし、目的の安定同位体ラベル化PUFA過酸化物は確認できなかった。この要因として、加熱による酸化では、PUFAの酸化によって得られたPUFA過酸化物が、さらに酸化が進み、二次酸化生成物を生成している可能性が考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、安定同位体ラベル化PUFAを酸化する方法を変えて、加熱ではなく、光酸化によって酸化する方法を検討する予定である。また、安定同位体ラベル化PUFA過酸化物の合成を確認する方法として、より感度の高い、化学発光検出-HPLC(CL-HPLC)による分析を試みる予定である。合成方法の再検討によって、安定同位体ラベル化PUFA過酸化物が得られ次第、マウスを用いた動物実験を行い、呼気試験、ガスクロマトグラフィー質量分析計、イメージング質量分析計にて、PUFA過酸化物の体内動態を調べる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年7月に第一子を出産し、その後、保育園に入園することができなかったため、2019年6月~2020年3月は研究を中断していた。2020年4月から研究を再開したため、今月から、合成試薬や動物試験、分析に使用するための消耗品等を購入予定である。
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